1. TOP
  2. DUAL
  3. DUAL旬ルポ
  4. 待機児童が3000人割れ、認可は入りやすくなったか
DUAL旬ルポ

待機児童が3000人割れ、認可は入りやすくなったか

Terraceで話題!

厚生労働省の発表では、2022年4月1日時点での待機児童数は2944人と前年比47.7%減。1994年の調査開始以来、初めて3000人を下回り、4年連続で過去最少となりました。待機児童ゼロを宣言する自治体も増えています。保育園への入園はかつてないほどハードルが下がっているとの見方もできますが、地域によっては依然として入園が簡単ではないという現状も見えてきます。毎年、首都圏などの主要都市や政令市の100の市区の保育施策について独自の調査を行い、「100都市保育力充実度チェック」として発表している「保育園を考える親の会」顧問の普光院亜紀さんに、都市部の保活事情について解説してもらいます。

「待機児童半減」のインパクトは本物か

 2022年8月30日の厚生労働省の発表によれば、同年4月1日時点での全国の待機児童数は2944人でした。これは前年の5634人からほぼ半分となりました。

 半減、しかも待機児童が全国で3000人未満と聞けば、もはや保育園は入園できて当たり前の時代になったのかと思う人も多いかもしれません。でも、この待機児童数は必ずしも実態を正確に表しているとはいえません。実際には都市部の1歳児クラスを中心に、認可の保育施設(認可保育園や認定こども園、小規模保育、家庭的保育など)への入園が厳しい地域はまだあるのです。

 実態を正確に表していないとはどういうことでしょうか。実は、厚労省が公表する待機児童数は国の定義する要件に該当するケースを除いてカウントされているため、実際に認可の利用を希望して利用できていない子どもの数とは大きな差があるのです。次のグラフを見てください。

保育園を考える親の会 2022年度版「100都市保育力充実度チェック」のグラフを元に、編集部で作成。100都市とは首都圏の主要市区および全国の政令指定都市
保育園を考える親の会 2022年度版「100都市保育力充実度チェック」のグラフを元に、編集部で作成。100都市とは首都圏の主要市区および全国の政令指定都市

 これは、保育園を考える親の会の独自調査である「100都市保育力充実度チェック」で示した、認可の保育施設に利用を申請して利用できていない子どもの人数とその内訳です。

 グラフを見て驚いた人がいるかもしれませんが、国が発表する待機児童というのはこの「認可の保育施設に利用を申請して利用できない子どもの人数」の総数を指しているのではなく、以下の条件に当てはまる人数が除外された数字なのです。

■待機児童数にカウントしなくてよいことになっている主な要件(要約)
・企業主導型保育事業(国が補助する事業、認可外)で保育されている場合(グラフ中の「企業主導型保育事業を利用している者」)

・自治体が一定の基準に基づき運営費支援を行っている単独保育施策によって保育されている場合(グラフ中の「地方単独事業を利用している者」)

・4月1日時点で育児休業中で、入園可能になれば復職する意思が自治体の調査で確認できない場合(グラフ中の「育児休業中の者」)

・通常の交通手段で20~30分未満で登園可能な申請した以外の保育所等(認可外も含む)について自治体が情報提供を行っても、特定の保育所等を希望して待機している場合(グラフ中の「特定の保育所等のみ希望している者」)

・求職活動中を事由として申し込んだ保護者が、自治体の調査時点で求職活動を行っていないことが確認できた場合(グラフ中の「求職活動を休止している者」)

 たとえば「特定の保育園等のみを希望する者」には、申請時に希望園を1つしか書かなかったり、空きのある保育施設(認可外も含む)を自治体から案内されて断ったりした場合が含まれます。例年、認可を利用できていない児童数全体の4割以上を占めています。その理由は「遠すぎる」「園庭のある園に入れたい」「質に不安がある」など保護者によってさまざまあるはずですが、何が希望に合わなかったのかは明らかになっていません。「選り好み」をすると待機児童にはカウントされないわけですが、保護者が子どものために園を選ぶのは当たり前のことなので、何がニーズに合っていないか調べてもいいのではないかと思います。

 また、「育児休業中の者」の占める割合が顕著に増加しています。育児休業を延長するために不承諾(保留)通知を希望した場合も含まれると思われますが、育休を延長できるのも1歳半もしくは2歳までですので、これらの人たちも近々入園できないと困る人たちです。

「利用できていない子ども」は待機児童の50倍

 「利用できていない児童数」(グラフの右端に書かれた数字)は20年度までは5万人台だったのが21年度には4万1073人、22年度は3万7505人と年々大きく減少しているので、全体的として認可に入園がしやすくなっていることは確かです。しかし、22年度の100市区の数字で計算すると、実際に認可の利用を申請して認可を利用できなかった児童数は、国の定義している待機児童数の50倍にもなっています

 保育園を考える親の会は、行政が発表する「待機児童数」では分からない入園事情を、「入園決定率」という独自の指標で観測しています。これは、認可に入園を希望した子どものうち、何%が入園できたかを調べた数字です。22年度の都市部100市区の平均入園決定率は81.2%。前年度から0.4ポイント上昇しました。10年前の12年度からは12.7ポイントのアップになっています。

 つまり、全体に入園事情は改善しているとはいえ、国の定義する待機児童数の大幅減ほどの改善にはなっていないと考えられ、手放しで喜ぶことはできないのです。

関連雑誌・書籍・セミナー

会員登録でクリップやタグの
フォローが可能になります
フォローしているキーワード/タグ
キャンセル
4/8「日経WOMAN」35周年イベント開催!

4/8「日経WOMAN」35周年イベント開催!

長野智子さん「キャリアの壁の乗り越え方」など。先着順・参加無料。