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罰や褒美に頼らない褒め方・叱り方は幸福度を高める

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子どもに自信を付けさせるために褒めたり、危ない行為をやめさせるために叱ったりと、子育てをしていると、褒めたり叱ったりする場面が多々あります。多くの場合、親は、短期的な目的をもって褒めたり叱ったりしがちです。けれども、褒め方や叱り方は長期的に子どもの成長に影響を及ぼし、子どもの将来の幸福度を大きく左右することが、神戸大学計算社会科学研究センター特命教授の西村和雄さんと同志社大学経済学部教授の八木匡さんが共同で行い、2022年10月に発表した「褒め方、叱り方が子どもの将来に与える影響-日本における実証研究」により明らかになりました。では、どんな褒め方・叱り方であれば、子どもに対して長期的にポジティブな影響を与えることができるのでしょうか。逆に避けるべき褒め方・叱り方とは? 西村さんに解説してもらいました。

「褒めることもよくない」は本当なのか

 子どもを褒めたり叱ったりすることの影響については、専門家の中でも様々な意見があります。とにかく褒めることを推奨する人もいれば、「逆に褒めることも、報酬と同様に子どもをコントロールしようとしているとして、よくないとする研究者もいる」そうです。今回の研究の出発点も、「叱ったり罰を与えたりすることはともかく、褒めることもよくないというのは本当だろうか」という問題意識からだったと、神戸大学特命教授の西村和雄さんは振り返ります。

 「私自身、40年前に米国で子育てをしていた頃、今の親御さんたちと同様に色々勉強し、迷ったんですね。そして今もなお、褒め方・叱り方については子育てや教育の場で様々なことが言われています。罰を与えたり感情的に叱ったりすることがよくないというのは直感的に理解できますが、ご褒美を与えたり褒めたりすることもよくないというのは本当なのだろうか。理論が書かれた専門書は存在しますが、実際に計測した結果は聞いたことがなかったので、それであれば私たちがということで、調査に至りました」

 西村さんは経済学分野の研究者でありながら、上記のような問題意識から子育て法に対し興味を持ち、ここ数年、子育てに関わる調査研究を実施してきました。2016年には子育ての方法が将来子どもにどのような影響を及ぼすかを調べた「子育てのあり方と倫理観、幸福感、所得形成-日本における実証研究-」を、2014年には、子どもの頃になされたしつけが労働市場における評価にどのような影響を与えているかを検証した「基本的モラルと社会的成功」を発表しています。今回発表した研究は、一連の研究の最新の知見です。

 今回の調査は、全国の20歳以上70歳未満の男女を対象にインターネットで実施されました(配信数2万7391件、有効回答者2052人)。

 子ども時代の親からの褒められ方・叱られ方によってそれぞれ3グループに分け、成人後の「自己決定度」「安心感」「計画実行能力」「法令順守」に対する影響を調べました。

 その結果分かったのは、「頑張ったね」と褒められ、叱られる際も「次は頑張ろうね」と励まされた人は、すべての指標において「ポジティブな影響がある」ことだったそう。詳しく聞いていきましょう。

■褒められ方によって下記3グループに分類

・『頑張ったね』と言われた
・『えらいね』と言われた
・褒美をもらった

■叱られ方によって下記3グループに分類

・『次は頑張ろうね』と言われた
・『どうしてできないの』と言われた
・罰を課せられた

→成人後の「自己決定度」「安心感」「計画実行能力」「法令順守」に対する影響を数値化
この記事で読めること
・子どもの将来の幸福度が上がる「褒め方」「叱り方」とは
・親子間が「○○の関係」のときに発せられる「褒め方」「叱り方」は、子どもの自己決定度と安心感を低下させる
・学校教育のほか、仕事でも部下や後輩育成において応用できる
・「具体的なルール」を定めることは、必ずしも罰を与えることにはならない
・「叱り方」に一貫性を持たせるためには、「ルール」をうまく利用することが有効

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