1on1を活用し取得予定をやんわり探る
第2部はパネルディスカッション。「育休取得パパとイクボスが語る『男性育休の取り方、送り出し方』をテーマに、アクセンチュアの「育休のプロ」3人が語り合いました。登壇したのは、第1部に引き続き市本真澄さん、イクボスとしてテクノロジーコンサルティング本部シニア・マネジャーの江口良亮さん、育休取得パパとしてインダストリーX本部コンサルタントの三上 亮さんです。ファシリテーターは日経BP客員研究員の羽生祥子が務めました。
中学生と小学校高学年の子どもを育てる江口さんは育休経験はありませんが、送り出す上司としての経験は豊富です。特にこの2~3年、育休を取りたいという男性社員からの相談が増えたと実感しているそうです。その際、「育休の取得期間については『言い値』で受け取っています」と江口さん。言い値というのは、社員が希望する期間をそのまま受け入れるということです。
市本さんも同じ意見です。「復帰時期は保育園入園との兼ね合いもあり、長短さまざまです。すぐに仕事に戻りたい人もいれば、子どもと向き合う時間を多く持ちたいからできるだけ長く取りたいという人もいます。とても短い人に対して心配なときもありますが、『大丈夫?』と聞くと不安にさせてしまうので、「なぜそのタイミングで戻るの?」と事実だけを聞くようにしています」

アクセンチュア株式会社テクノロジー コンサルティング本部 シニア・マネジャー
2006年に経験者採用で入社。さまざまな産業において、カスタム開発によるシステム導入、運用保守を推進。所属するプロジェクトにて育児休業を取得する男性社員の送り出し、迎え入れを多数経験。自身の育児休業取得経験はなし。中2、小5の子どもと妻の4人家族。週末は釣り、サイクリング、キャンプなど外で楽しむことが多い
報告を受けた後はどのように対応するのでしょうか。江口さんはまず、「取得するメンバーの不在をどうカバーしようか」「その期間の業務の回し方」ということを考えるそうです。
「育休取得者といってもいろいろな年次の人がいるので、対応の仕方はそれぞれです。例えば、開発の現場にいて、主なコミュニケーション先が社内関係者である場合は取得時期に合うように仕事の進め方を調整します。年次が進んでいてお客様とのコミュニケーションがメインの仕事をしている人の場合は、ノウハウや信頼を引き継ぐためにある程度の時間をかけて準備する必要が出てきます」
準備の時間を取れるかどうか。それは、育休を取るメンバーの情報をいかに早く得られるかにかかっている、と江口さん。その情報を得るために活用するのが、部下との1on1(ワンオンワン)で、3カ月に1度ほど実施しているそうです。
育休取得を強要する印象を与えないために、育休という言葉を使うことはありません。「去年結婚したからそろそろかもしれない」と思う相手に対しても、あくまで「今後、大切にしたいライフイベントは?」というように、ふんわりした聞き方にとどめているのだそう。
「育休を取ることで迷惑が掛かるのではと、うしろめたく感じる男性もまだいます。そういう人に『取ってくださいね』という思いを伝える意味でも『ライフイベント』という言葉を使っています」
市本さんはワーキングペアレンツ支援に関わっている立場上、妻が妊娠した男性社員からも相談を受けることが多いそうです。
「そのときは、『これからどうしていきたい?』と話を聞きながら『育休という選択肢もあるよね』と軽く触れています。女性は育休や両立の情報を事前に持っている人が多いのですが、男性は当事者になるまであまり育休を意識しておらず、情報も持っていない人が多いからです。強制はしませんが、『経験者としてはおすすめだよ』ということは伝えています」