教育の問題点や理想の姿を探るリレー連載。前編に引き続き、性教育を当たり前にし、性にまつわる課題解決のためにさまざまな活動を行っているソウレッジの創業者である鶴田七瀬さんにご登場いただきます。大学休学中に留学した北欧にて、性教育が当たり前にある環境を目の当たりにした鶴田さん。後編では、留学時代に北欧で感じた日本社会との大きな違いや、ソウレッジの活動、そして現在注力している性教育上の課題について聞きました。
<鶴田七瀬さん>
【前編】意見を持つのは「コスパ悪い」 日本の教育の問題点
【後編】居場所ない若者に性教育を 知識の種はいつか芽吹く ←今回はココ
北欧で見た、性教育が日常にある姿
性教育を学ぶため北欧に留学した鶴田七瀬さん。北欧で見たのは、大人と対等な関係性の中で自己効力感を築いている子どもたち、そして、授業でコンドームの使い方を教え、家庭で避妊について話し合うような、性教育が日常に溶け込んでいる光景でした。
「北欧では、大人が性教育を『大事なこと』と認識していて、教育現場や家庭に当たり前のように存在していました。一方日本は、性教育がとても特別視されてしまっている。日本で性教育が日常に溶け込むための第一歩は何がいいかと考えて思いついたのが、性教育トイレットペーパーです。性の話がいくら大事だからといって、いきなり恥ずかしい気持ちをなくせるわけではない。その点、トイレは完全にプライベートな空間ですし、誰の目も気にせずに性の知識を得ることができるのではと考えたんです」
性教育トイレットペーパーには、生理や射精といった体の仕組みから、性的同意の概念や性暴力とはどういうことか、被害に遭ったらどうすればいいかなど、幅広い内容が親しみやすい言葉とイラストで描かれています。

「留学中にプロトタイプ版をつくって。ツイッターに投稿したらバズったこともあり、帰国後にクラウドファンディングで資金を募り、販売を始めました」
こうして鶴田さんは2019年に、性や妊娠にまつわる課題解決のためソウレッジを創業します。性教育トイレットペーパーのほか、文字を読めない小さな子でも、プライベートゾーンを守ることを学べるカードゲームの「プラベ」、人生の中で起こるさまざまな性の課題について学べる大人向け性教育ボードゲームの「ブレイクすごろく」などを開発・販売するほか、教材を使った研修も行っています。
「『ブレイクすごろく』は、人生ゲームのような形で5歳からスタートし、成長する過程で直面する性の悩みや今の若者が生きる環境について遊びながら知ることができるようになっています。学校や行政機関などで行う研修では、実際に遊びながら参加者同士で経験談や意見などについて対話ができるようになっています。普段は話しづらいことについてもたくさん話し合いをするため、終わるころには参加者が仲良くなっています。最近では企業研修などでもチームビルディングで活用していただいていますね」