「教育移住」を選択した先輩たちに、実践したからこそ分かる「教育移住のリアル」を聞いていく本連載。今回は、2020年1月に家族4人でドイツに移住した高倉ちづさんと17歳の息子さんにご登場いただきます。ひとりずつインタビューを行い、親と子の本音を探りました。「息子たちは日本の学校の枠に押し込まれて息苦しそう」と感じた高倉さんは、2人のお子さんがそれぞれ中2と小3の冬にドイツへ。前編ではお母さんの高倉ちづさんに、ドイツ移住を決めた背景や現地での生活、お子さんたちの変化などについて聞きました。
【前編】日本の学校教育に違和感覚え、ドイツに教育移住 ←今回はココ
【後編】「はじめは嫌だった」 長男に聞いたドイツ教育移住
移住前まで、夫も子も海外経験はゼロ
日経xwoman DUAL(以下略) 高倉さんはフリーランスで英日翻訳やデザインの仕事をされていたとのこと。ご家族の皆さんで海外志向があったのでしょうか。
高倉ちづさん(以下、高倉) いえいえ、私自身はいつか海外で働いてみたいと思っていたけど、夫や息子たちは移住するまで一度も日本を出たことがなく、特に海外に興味がありませんでした。私たちが住んでいたのは福岡市近郊で、海も山も近くにある自然豊かなところ。子どもたちは虫取りや海遊びをしてのびのび育ち、子育てには最高の環境でした。夫は木工作家として活動していました。
―― なぜ海外移住を考えるようになったのですか。
高倉 長男が小学校に入って、学校教育に少しずつ違和感を覚えるようになったからです。例えば、長男は知的好奇心が強く、早く学ぶタイプで、授業中には課題が早く終わってしまう。やることがなくて、先生に「学級文庫の本を読んでおいて」と言われても、もう全ての本を何回も読んでいるんです。だから「1冊だけ難しい本を置いてもらえないか」「家から本を持っていきたい」とお願いしても、特別扱いはできないと却下されました。自分の名前を漢字で書いたら、まだ学校で習っていない漢字だからダメと注意されたこともありましたね。
―― みんな一律というのは日本の公立校の特徴ですね。
高倉 中学に進学後、長男は自分でやりたいことがあるからと、部活に入る気がありませんでした。でも、「うちの学校は全員必ず部活に入らなければいけない」と言われて。夫が教育委員会に相談し、部活必須というルールがやっとなくなりました。学校生活では、成績はいいけど言いたいことを言うので、先生には生意気だと思われていたようです。「社会に適応できるか心配」と言われたこともあります……。
私たち夫婦が息子にどれだけ「あなたの意志が強いところ、やりたいことがいっぱいあるところ、言いたいことを言えるところ、自分で判断できるところは、すごくいいところだよ」と言っても、こんなふうに先生やまわりに抑えられてしまうと、個性を消そうとするようになるかもしれない。下の子もやりたいことを追求するタイプだったので、海外に出た方がいいかもしれないと思うようになりました。
