世界各国に住むライターが、現地に暮らすARIA世代の女性にインタビューをし、その国・地域ならではのキャリア設計、家族の形、趣味やトレンドなどを紹介する連載。今回は、常にユニークで新しいカルチャーを生み出す米国ポートランドから、全米で大人気の動物セラピーについて伝えてもらいます。

 「ポートランドは風変わりなままでいよう(Keep Portland Weird)」が市の合言葉になっている米国オレゴン州ポートランド。ここでは、固定観念にとらわれない新たなビジネスアイデアが生まれ、また、受け入れられやすいと言われています。

 今回はそんなポートランド近郊から「ユニークで面白い」と世界のメディアにも取り上げられた動物セラピーを提供する2人の女性起業家を紹介します。

ヤギの邪魔こそ醍醐味(だいごみ)の「ヤギヨガ」

 「ヤギヨガ(Goat Yoga)」とは、放し飼いのヤギたちがいるスペースにヨガマットを敷き、そこで行うヨガのこと。マットの上で昼寝をしてしまったり、ヨガポーズ中の人の背中に飛び乗ったり、髪を食べようとしたり……、とヨガのクラスを邪魔するいたずらヤギたちが、参加者を癒やしてくれます。

 この一風変わったヨガを全米規模のビジネスに仕立て上げ、「ヤギヨガ旋風」を巻き起こしたのが、「Original Goat Yoga」の創業者、レイニー・モース(Lainey Morse)さんです。

大好きなヤギと戯れるレイニーさん
大好きなヤギと戯れるレイニーさん

 ヤギヨガ誕生のきっかけは、レイニーさん自身が慰められたヤギとの時間をみんなと共有したこと。当時、離婚したうえに原因不明の病気、さらには失業と心配事で頭がいっぱいになっていた彼女が唯一悩みを忘れられたのは、農場で飼っていた人懐っこい赤ちゃんヤギと過ごす時間でした。

 そんな癒やしの力を持つヤギたちなら、他の悩みを抱える人たちも励ませるのでは、と考えたレイニーさんは、この時間を「ヤギとのハッピーアワー」と名付けて、身近な人々を農場へと招待し始めました。そして、参加者の1人だったヨガのインストラクターが「ここでヨガをやってみたい」と言い出したのです。

 レイニーさんは軽いノリで同意し、ソーシャルメディアで告知したところ、予想を大きく上回る申し込みがあり、ヨガイベントは満員御礼でウエーティングリストができたほどでした。レイニーさんは、大いに盛り上がったこのイベントの写真を雑誌に送付したところ、すぐさま掲載が決定。そして、この記事をきっかけに大手メディアにも取り上げられ、ヤギヨガはあっという間に全米に知れわたることとなったのです。