初めてのソロシーンで大けが、最大の試練に

紫吹 ああ、ありました! あれは試練でしたね。後遺症もなく過ごせているから忘れていました(笑)。

 初めて宝塚大劇場でソロのシーンをいただいたときに足首をけがしてしまって。そんな大きなチャンスでけがをして出られなくなったことで、私はもう踊れないんじゃないか、私の帰る場所もないんじゃないか、と。それにもまして、初めていただいたソロの場面を台無しにしてしまったことに対する申し訳ない思いでいっぱいでした。

 3カ月ほど歩けませんでしたし、当時は24歳ぐらいでしたから、精神的にもそこまで大人になれていなかったので絶望感や挫折感にも襲われました。初めての大きなけがで、リハビリも大変でした。リハビリは私の性格に向いていないんです。やってもちょっとずつしかよくならないし、一進一退。やった分がそのまま成果となって返ってくるわけではないじゃないですか。それが無性に腹が立って。私はやった分がしっかり返ってこないと嫌なタイプなんです。

 足首のけがなので、立って足首に体重が乗ったときの一歩が痛いんですね。リハビリをしたその日に少しよくなるのですが、寝たらまた同じ状態に戻ってしまう。それがすごく嫌で、丸一日立ち続けていたことがあります。お医者様にすごく怒られましたが。

 実はその後、自分でリハビリ器具も作ったんですよ。寝ていても立っているのと同じ状態をつくればいいんだと思って、ワインの木箱に足を入れて、ストッキングでグイグイ手前に引っ張って、この状態で寝ればいいんだ、と。全くの自己流なので、まねしないでくださいね。

 でもそれぐらい、できることは何でもやって復帰しました。努力という言葉は嫌いなのですが、努力はした分だけ何かが返ってくるもので、無駄はないと思っています。

 リハビリに限らず、やる以上、なんとかよくなりたい、うまくなりたいと考えますし、自分でできることを頑張らなくて後悔するのは自分なのでとりあえず頑張る。自分が納得するまでやりたいタイプです。自分ができる努力を最大限することで、挫折と向き合えたのかなと思います。それに加えてファンの方、自分を待ってくれている人、仲間たちの励ましによって頑張れたのかなとは思います。

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取材・文/中城邦子 構成/市川礼子(日経xwoman ARIA) 撮影/洞澤佐智子