50代からの新たなステージへの挑戦は、これまでに高い評価を得ている人こそ勇気がいるに違いない。宝塚歌劇団でトップスターとして活躍し、退団後も舞台を中心にドラマでも活躍する紫吹淳さんが、2023年1月19日にスタートするドラマで初の主演を務める。紫吹さんにとっての一期一会とは?
(上)54歳でドラマ初主演「脳が沸騰する感じ」
(下)宝塚18年、俳優18年、「女」が分からず苦悩 ←今回はココ
女性のしぐさが分からず、グーパンチ
編集部(以下、略) 宝塚歌劇団で18年間活躍しトップスターも務めた紫吹さんが、退団してちょうど18年のタイミングで「ママはバーテンダー~今宵も踊ろう~」(毎週木曜夜11時30分、BS-TBS)でドラマ初主演ですね。
紫吹淳さん(以下、紫吹) まさかドラマの主演をいただくことがあるとは思っていませんでした。54歳ですから。でも今、このタイミングで本当によかったという思いもあるんです。宝塚歌劇団を退団してから3年ぐらいは、女役、女性というものが分からなくて。何をやるにも戸惑っていました。男役をしていたときは男性になることしか考えていなかったので、ちょっとしたしぐさにも、女の人はどうやってするの? そもそも女って……? と悩みながらの日々だったのです。
私がいかに、分かっていなかったかというと――退団して初めての作品が、当時V6の坂本昌行くん主演のミュージカルだったのです。台本に「彼の胸を殴る」って書いてあったのですが、殴り方と加減が分からなくて、彼を本当にグーでパンチしちゃったんですよ。
坂本くんがびっくりして「えっ、何?」って。「殴るって書いてあるから」と言ったら、「普通、彼の胸を殴るっていったら違うでしょう、こうでしょ」と、子どもがイヤイヤをするようにペタペタ胸をたたくしぐさを教えてもらったくらいです。
そんなでしたから18年という時を経て、男役と女役を演じた期間がちょうどトントンになって、やっとフラットになった感じがします。バーテンダーとしてのカッコよさも細やかさも、シングルマザーとしての力強さも優しさも求められるこの作品に出合えたことは、本当にラッキーだなと思っています。