「マンガじゃなくて本を読みなさい!」「ゲームばかりしてたらダメ!」などと小言を口にしてしまっていたら、ちょっと待って。マンガやゲームは今や「勉強の敵」ではありません。子どもの「好き」に火がつき、時に学びを深めるための効果的なサポートツールになることも。これまで多くの小学生、中学生を合格へと導いてきた受験指導専門家の西村創さんが、小中学生にぜひ読んでほしいマンガ、遊んでほしいゲームを紹介します。マンガ&ゲームの魅力と共に、「学びとは何か」についても切り込んでいきます。連載第4回で西村さんがおすすめするのは、2021年にテレビドラマ化もされた中学受験マンガ『二月の勝者―絶対合格の教室―』です。
中学受験のための参考書
首都圏はそろそろ受験本番を迎えますが、昨年2022年の2月時点で、首都圏では過去最高の受験者数と受験率を更新。現在中学受験は空前のブームで、特に都内の教育熱が高いエリアでは、中学受験をしない子がクラスに数人しかいない学校もあるほどです。
今回は、そんな過熱する中学受験をテーマにしたマンガ『二月の勝者―絶対合格の教室―』(高瀬志帆作/小学館)を作者、高瀬志帆さんへの取材コメントと共に紹介します。
『二月の勝者』のすごさを一言で言うと、見事なリアルさでその光と影も含め中学受験を描き出している点。
私は塾講師として親子に関わる中、中学受験を検討し始めた保護者にはまず「『二月の勝者』を読んでください」とこの作品をすすめてきました。
多くの受験に関する本は、情報量は多くても逆にそれがハードルの高さとなり、忙しい日常ではなかなか手にしづらいものです。一方『二月の勝者』は保護者のための情報誌ではなく、エンタメ作品。だから読んでいておもしろいし、読んでいるうちに自然と中学受験の世界がほぼ丸ごと理解できるのです。
『二月の勝者』は、中学受験を舞台に、カリスマ塾講師・黒木蔵人をはじめ、新米講師や生徒、その保護者の視点で中学受験を描き出す群像劇。
―中学受験は「課金ゲーム」です―
といったセリフの数々も話題となった作品ですが、作品で描かれる受験に突き進む親子とそんな親子をサポートする塾講師の姿は、複数の塾に長年勤めてきた私から見ても違和感のないリアルさ。それもそのはず、「公式・非公式含め首都圏の主要な塾をすべて取材した上で描いています」と、作者の高瀬志帆さん。
作中には実在のモデルがある塾や模擬試験が多数登場します。受験のための基礎知識はもちろんのこと、中学受験特有の空気感や時間の経過に伴う受験生とその保護者の心理状態、塾講師の役割などを理解することができる、まさに中学受験の参考書とも呼べる作品です。
