新しいものや面白いことが生まれやすい風土こそが筑駒らしさ

 筑駒は、生徒数も少なく、学校全体がどこか一つの家みたいなところがあります。ゆったりした空間は緑豊かで、頭の上には空が広がっていて、ごろっと寝そべったり、ただぼんやりと過ごしたり、好きなことのできる場所があちこちにある。この居心地のよい空間に身を置き、自由にものを考える、やりたいことをやる。

 そういう風土の中で、文化祭をはじめとして完全に生徒たちの手で行われる様々な行事も、その都度、自分たちならではのものを創り上げようとする。

 こういうスタンスでことを行えば、想定外のことが起こりがちですが、それもまた面白いじゃないか、と、みんながなんとなく思っている。そして、その中で最適解を見つけるべく力を発揮する。だからやりたいと思ったことにチャレンジしやすいんです。

 今までお話してきたこと全体にも通じるのですが、異なる才能や個性が交ざって新しいものや面白いことが生まれやすい風土こそが、筑駒らしさではないかと思うんです。

 国語の授業や演劇部の文脈でいうと、筑駒生は驚くほど言葉遊びが好きです。単純な語呂合わせもそうですが、言葉から連想を繰り広げたり、ふつうはあり得ない言葉の組み合わせからイメージを喚起させてお互いに楽しんだり。卒業生に劇作家・演出家の野田秀樹さんがいらっしゃいますけど、その作風のルーツともいえそうな光景を目の当たりにします。言葉と戯れながら、そこから立ち上がる世界をともに楽しむ風土が、昔からあるのだと思います。

 言葉にはあらかじめ決まったことを伝達するだけではなく、イメージを広げたり新しく生み出したりして世界を創る働きがありますよね。

 生徒には伝達だけでなく創造も大切にしてほしいし、異なる他者と言葉を通して世界を豊かに創っていく喜びをたくさん経験してほしいと思います。そして、大人である私たちは、そういう経験へ彼らを導くしかけを、これからもたくさん作っていきたいですね。

「生徒には伝達だけでなく創造も大切にしてほしいし、異なる他者と言葉を通して世界を豊かに創っていく喜びをたくさん経験してほしいと思います」
「生徒には伝達だけでなく創造も大切にしてほしいし、異なる他者と言葉を通して世界を豊かに創っていく喜びをたくさん経験してほしいと思います」

取材・文/平林理恵 写真/稲垣純也