「教育移住」を選択した先輩たちに、実践したからこそ分かる「教育移住のリアル」を聞いていく本連載。今回ご登場いただくのは、2022年7月に父子でシンガポールに移住した、ビザスク APACジェネラルマネージャーの須賀智秋さんです。息子さんが小4になるタイミングで「中学受験か海外移住か」を悩んだ末、シンガポール勤務ができる会社に転職して教育移住を実現した須賀さん。前編では、シンガポールへの移住を決断した理由や、教育移住を視野に入れた転職活動などについて聞きました。
【前編】中学受験より海外へ 転職しシンガポールに父子移住 ←今回はココ
【後編】シンガポール父子移住 56カ国の同級生と学ぶ日々
日本での中学受験よりも海外移住を選んだ理由
日経xwoman DUAL(以下略) 息子さんにシンガポールで教育を受けさせるために転職したとのことですが、海外への教育移住を希望したきっかけを教えてください。
須賀智秋さん(以下、須賀) 転職前はリクルートに勤務していて、海外子会社のカントリーマネージャーとしてフィリピンに駐在していました。当時年長だった息子も一緒に連れて行っていたのですが、新型コロナウイルスの影響により小1の途中で帰国せざるを得なくなってしまったんです。
帰国後は、いずれフィリピンに戻れるだろうと思って公立小に通わせていました。でも、そのめどが立たないまま小4の進級が近づいてきてしまって……。息子には、将来の選択肢が増やせるような、手厚い教育を受けさせておきたいと考えていたので、このまま日本にいたら、おそらく中学受験をさせることになるだろうと思っていました。けれど、「本当にそれでいいのだろうか」と考えたときに、ふと思い浮かんだのが「海外に行くという選択肢はどうだろう」ということでした。
―― 日本での中学受験ではなく海外移住を選んだのは、どのような理由からですか。
須賀 僕自身が中学受験の経験者で、小3から塾に通っていました。僕は受験のための勉強が好きになれず、小6の時点では中学受験をやめたかったのですが、それまでの塾通いなどが全て無駄になってしまうと思うと言い出せなくて。中学受験は一旦、始めてしまうとなかなか止められないと身をもって知っていたので、親の判断で息子の中学受験を決めてしまうことに迷いがあったんです。
その一方で、「親の与えた教育環境が子どもの人生を左右する」と考えるのはおこがましいという意識もありました。僕にできることは、息子が自分で人生を切り開いていくのをサポートすることくらいであって、それは中学受験をしても海外移住をしても同じだなと。僕自身のキャリアに関してはもう一度海外で挑戦したいという気持ちが強く、その姿を息子に見せたいという思いもあったので、「じゃあ、海外に行くか」ということになりました。
―― なぜ移住先としてシンガポールを選んだのですか。
須賀 理由は3つあります。1つ目の理由は、アメリカやヨーロッパに比べると日本からの距離が近く、時差が小さいこと。何かあったときのことを考えると、日本との行き来がしやすいことは大切だと思いました。
2つ目は、シンガポールなら世界中から人が集まる環境に身を置けること。アメリカに移住した場合は周囲の人の多くがアメリカ人という環境になりますが、移住した今、息子が通っているインターナショナルスクールには世界56カ国から生徒が集まっていて、真にグローバルな環境で学べる点に魅力を感じました。
そして、3つ目の理由は治安の良さです。シンガポールの犯罪発生率は日本よりも低く、子ども一人でも安心して電車に乗れます。医療体制が整っているという点でも安心感がありましたね。