「教育移住」を選択した先輩たちに、実践したからこそ分かる「教育移住のリアル」を聞いていく本連載。前編に続き、日本初のイエナプランスクール認定校「学校法人茂来(もらい)学園 大日向小学校」に長男を入学させるため、2022年4月に、当時年長(新小1)だった長男と、年少だった次男、そして生後1カ月の新生児だった三男を含めた家族5人で東京から長野県佐久市に移住した、ベンチャーキャピタル、インクルージョン・ジャパン代表取締役の服部結花さんにご登場いただきます。イエナプラン教育は1924年にドイツで始まり、後にオランダで広まった教育方法で、異年齢のクラスでの対話を重視し、一人ひとりの個性を尊重しながら自律と共生を学ぶのが特徴です。後編では、児童の約7割が県外からの移住者だという大日向小の教育内容と学校生活について、詳しく聞いていきます。
【前編】長野移住 中受→国内大のレールに乗らずに済むため
【後編】長野・大日向小移住 イエナプランの学校で学ぶ日々 ←今回はココ
異年齢のクラスで子ども自らが計画を立てて学ぶ
日経xwoman DUAL(以下略) 異年齢の子どもが共に学ぶのがイエナプラン教育の特色です。大日向小のクラス編成はどうなっているのでしょうか。
服部結花さん(以下、服部) 1学年の人数は約30人なのですが、1年生30人のクラスで授業をするのではなく、1年生から3年生まで交ざったグループが3つあり、異年齢の子どもたちが同じ教室で学んでいます。4年生から6年生までも同様のグループがあります。
―― 学校まではどのようにして通っているのですか。
服部 佐久平駅からスクールバスが出ていて、30分くらいかけて通っています。朝は「サークル」という対話の授業から始まり、みんなで輪になって座って、週末に何をしたかを話したり、あるテーマについて話し合ったりします。担任の先生は「グループリーダー」と呼ばれていて、対話を促すことはありますが、一般的な小学校の朝の会のように先生が一方的に話をするということはありません。
―― 授業はどのような内容を学ぶのでしょうか。
服部 午前中は「ブロックアワー」といって、いわゆる国語・算数といった各教科の基礎的な学習を行います。午後は、教科横断的な探究学習に当たる「ワールドオリエンテーション」に取り組みます。
―― 午前中の「ブロックアワー」について詳しく教えてください。
服部 ブロックアワーでは、何をやるかが空欄になっている時間割が週の初めに配られて、グループリーダーから示された「やらなければならない課題」と「自分自身が学びたいこと」のそれぞれについて、いつやるかを子ども自らが計画を立てて取り組みます。教室に黒板はなく、一般的な学校のような一斉授業は行いません。
例えば、算数で初めて習う単元の勉強をするときは、長くても10分程度の簡単なレクチャーをします。進度は一人ひとり違いますが、各自がドリルやタブレット端末などを使って自分のペースで学習を進めていきます。
―― お昼ごはんは給食があるのでしょうか。
服部 はい。大日向小では「学校ごはん」と呼んでいます。校内にある「大日向食堂」で毎日手作りされていて、地元・佐久穂町産の食材がたくさん使われているのが特徴です。イエナプラン教育の「子ども一人ひとりの個性や意思を尊重する」という考え方に基づき、「学校ごはん」は基本的にバイキング形式になっています。自分が食べられる量を自分で決めて、自分で選んだ量は責任を持って食べようね、というルールになっているんです。
