「教育移住」を選択した先輩たちに、実践したからこそ分かる「教育移住のリアル」を聞いていく本連載。今回ご登場いただくのは、2022年10月に、当時9歳の長女と6歳の次女を含む家族4人で大阪から長野県伊那市に移住した、クラウド型の在庫分析システムを販売するスタートアップ企業、フルカイテン(大阪市)CEOの瀬川直寛さんです。移住前は、大阪でも教育熱心な地域に住んでいたという瀬川さん一家ですが、新型コロナウイルス流行をきっかけに、当時の教育環境に息苦しさを感じるようになったそう。前編では、瀬川さん一家の移住のきっかけや、理想の教育環境に出合うまでの道について聞きました。
【前編】長野・伊那小 「勉強だけが評価軸」の都会に違和感 ←今回はココ
【中編】長野・伊那小 通知表のない“公立”小学校の授業内容
【後編】田舎も都会も両方知っていることが選択肢を増大させる
コロナで街も学校も「勉強一色」に
日経xwoman DUAL(以下略) 教育移住を考え始めたきっかけを教えてください。
瀬川直寛さん(以下、瀬川) 2020年の新型コロナウイルス流行の影響で、子どもの学校生活が変わってしまったことが、そもそものきっかけでした。「学校で隣の席の子と話してはいけない」「給食も黙って食べる」「トイレも1人で行く」、そんな学校の様子を聞いて、親としても息苦しさを感じていました。当時は体育もマスクが必須で、複数の子どもたちが熱中症のような症状になってしまい、救急車で運ばれたこともありました。
さらに休校もあり授業時間が減ったため、音楽や図工などの副教科や行事がほとんどなくなり、学校生活が机に座って行う「勉強」一色になってしまったんです。もともと教育熱心な人が集まる地域ではあったのですが、コロナでその傾向に拍車がかかり、子どもも大人も「勉強第一」になってしまって。子ども同士で、友だちのテストを勝手に見て、「自分は◯◯点だったよ」と言い合ったり、親同士の会話も、「うちの子はもうこんな勉強をやっている」みたいな話ばかりになったり。そんな、私からしたらどうでもいいようなことで、親も子どももマウントを取り合っている、街全体がそんな空気になったように感じていました。
―― 瀬川さん自身は、子どもの「勉強」について重要視していなかったのでしょうか?
