「教育移住」を選択した先輩たちに、実践したからこそ分かる「移住のリアル」を聞いていく本連載。前回に続き、マレーシア移住11年目の文筆家・編集者の野本響子さんによる教育移住リポートをお届けします。後編となる今回は、野本さん自身の教育移住ストーリーと18歳になった長男の今をつづってもらいました。
【前編】マレーシアへの教育移住、円安でもなぜ人気?
【後編】マレーシア教育移住 インド・華人の同級生から刺激 ←今回はココ
東南アジアではパンデミック(世界的大流行)が一段落。子どもに海外で教育を受けさせたいと、マレーシアのインターナショナルスクールに教育移住する層が戻ってきています。私が11年前に来て驚いたのは、その多様性と、転校のしやすさでした。「子どもが幸せじゃなければ学校を替える」という人がいるくらいの柔軟性。わが子も短期・長期合わせて9つの学校を体験しました。
子どもの幸せを求め気軽に転校させるマレーシア
なぜマレーシアなのですか? とよく聞かれますが、私がマレーシアを選んだのは、ただの偶然です。
1990年代の半ば、まだ親になっていなかった頃、インターネットのチャットで知り合ったマレーシア人と仲良くなり、彼らの子育てに興味を持ったのがきっかけでした。そこから家族ぐるみの付き合いが始まり、翌年は2家族で一緒にマレーシア各地を旅行しました。
その際、友人夫婦の3人の子どもたちはどこへ行ってもかわいがられていました。また、友人から「子どもがハッピーじゃないから」と気軽に子どもたちを転校させている様子を聞いて驚きました。
そんな世界があるのか……。
当時の私は「こんな子育て方法があるのなら、子育ても悪くないな」と感じたのです。その後、長男が生まれると、ティーンエイジャーになった彼らの子どもが東京に来て、「マレーシアのインターナショナルスクールが面白い。あなたの子どもにもおすすめしたい」と勧めてきました。
「とにかく、授業が楽しいよ」
「韓国人がたくさん来ている。なぜ日本人は来ないの?」と。
マレーシア人の友人は、静かに言いました。
「これから世の中はグローバルになっていくよ。日本もいいけど、世界のグローバル化に対応できるだろうか? 数年でもいいから、マレーシアに来て子育てしてみたら?」
当時はどこか他人事でしたが、この言葉が数年後に現実になっていきます。
