誰もが自由に発信できる「人類総メディア時代」。そこには、知らないうちにネット炎上に巻き込まれたり、フェイクニュースを拡散してしまったりというリスクも潜んでいます。米国大統領選挙で注目されたフェイクニュースは日本でも身近に多く出回るようになっています。フェイクニュースにだまされないためにはどうしたらいいのか。統計的な手法を用いてデータを分析し、ネットメディアを研究する国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授、山口真一さんに聞きました。
(1)「正義感」でネット炎上に加担する人の意外なプロフィル
(2)企業はSNSをどう使うべきか 炎上防止対策を考える
(3)フェイクニュースが日本でも拡散 真偽を見抜くには? ←今回はココ
陰謀論レベルでも一定数が信じてしまう
編集部(以下、略) 2016年の米国大統領選挙以降、フェイクニュースが世界的に注目されるようになりました。日本でもフェイクニュースは増えているのでしょうか。
山口真一さん(以下、山口) 欧米に比べると少ないのは事実ですが、日本でもフェイクニュースは増えています。特に多いのは新型コロナウイルスにまつわるもの、最近ではロシアのウクライナ侵攻にまつわるフェイクニュースも多く出回っています。
「5Gでムクドリが大量死」など誤情報だと確認できた9つのフェイクニュースを調査したところ、どの事例でも5~10%の人が認知しており、その人たちのうち77.5%が誤情報だと気付けていませんでした。認知した人の4人に3人はだまされていたのです。フェイクニュースはすでに身近にあって、誰でも接触する可能性があるのです。
また上記の9つ以外で、「ワクチンは人口減少を目論(もくろ)んだもの」といった、いわゆる陰謀論レベルでも10%の人が認知しており、そのうち11%が「信じている」、31.4%は「本当かどうか分からない」と回答しました。つまり、この情報を知っている人の42%はフェイクニュースだと気付いていない。推計すると、日本人全体の3~4%にもなります。陰謀論レベルでも一定数が信じている。これは衝撃的な数字でした。
―― 日本でもフェイクニュースが広まっていて、多くの人が惑わされているんですね。
山口 そこで大事なのは、誰もがだまされる可能性があると心得ておくことです。米国で興味深い研究があります。フェイクニュースの真偽を判断する能力について、90%以上が自分は「平均以上に高い」と考えていて、4人に3人は自分の能力を過大評価していました。さらに、自分を過信している人は、むしろ真偽判断能力が低いことが分かっています。自分に自信がある人ほどだまされやすいのです。
―― フェイクニュースはなぜこんなに広がるのでしょうか。