高学年の授業では、あるテーマについて賛成・反対の立場に分かれて議論を行う「ディベート」が取り入れられることがあります。どちらの主張がより説得力があるかによって勝敗が決まるため、相手を言い負かそうとする子も少なくありませんが、そのような姿勢ではディベート本来の教育効果が得られにくくなってしまうことも。逆にディベートのポイントを理解した上で実践を重ねれば、将来の入試や就職、社会人になってからでも役立つ論理的思考力や物事を多角的に見る力が身に付きます。ディベートを行う目的や親からアドバイスできることについて、NPO法人 全国教室ディベート連盟の理事長で千葉大学教育学部教授の藤川大祐さんに聞きました。

【年齢別記事 小学校高学年のママ・パパ向け】
(1) 高学年 理不尽な人間関係が対応の引き出しを増やす
(2) 入試も有利に 高学年のディベート授業で身に付く力 ←今回はココ
(3) 親離れできない高学年 背景に高学歴親の存在

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自分の意見とは異なる立場での主張も

 5、6年生になると、授業の中でディベートが取り入れられることがあります。そもそも、学校で行われるディベートとは、どのようなものなのでしょうか。

 「ディベートは、論理的に考え、議論をするためのトレーニングです。現在行われているようなディベートは、もともと英語圏で広がったもので、日本では大学生が英語ディベートに取り組むことが多くありました。1990年くらいから日本にも学校教育の一環として本格的に導入され、2000年代からは教科書にも掲載されるようになりました。実践内容は学校により異なりますが、国語、社会、総合的な学習の時間などでディベートに関する内容が取り上げられるようになっています」

 そう話すのは、全国教室ディベート連盟理事長の藤川大祐さん。ディベートでは、あるテーマに対して2つのチームが「肯定」「否定」の立場に分かれて、その討論を聞いている第三者を説得する形で議論を行います。自分自身の意見は「肯定」だったとしても、自分が所属するチームが「否定」側であれば「否定」の立場からの意見を述べなければならず、与えられた立場から説得力のある主張ができるように、論理的な考え方・話し方をすることが求められます。

 中学・高校のディベート日本一を決める「ディベート甲子園」では、「立論」「質疑」「第一反駁(はんばく=反論)」「第二反駁」「判定」という順番で討論が進められますが、小学校の授業では指導者によって進め方に違いがあり、「立論」「質疑」「結論」といった簡略化された方法で議論することも多いようです。

 学級会などでの話し合いが苦手な子は、ディベートにも苦手意識を持つかもしれません。けれども学級会とディベートは異なります。「学級会は自由な話し合いなので、子どもにとっては難しく、上達もしにくい」と藤川さん。これに対してディベートは型やルールがあるため、取り組みやすく、回数を重ねることで上達しやすいのだそう。

 「正しく取り組めば、将来の入試や社会人になってからも役立つスキルや能力を身に付けることができる」と藤川さんは言います。ディベートの際に意識したいポイントや、家庭でできる親のサポート方法などについて、詳しく聞いていきましょう。

ディベートの方式は目的によってさまざまだが、「ディベート甲子園」の場合は肯定・否定それぞれ4人ずつのチームに分かれ、観客の前で順番にスピーチしていく
ディベートの方式は目的によってさまざまだが、「ディベート甲子園」の場合は肯定・否定それぞれ4人ずつのチームに分かれ、観客の前で順番にスピーチしていく
この記事で分かること
・同じテーマで討論することで、話し方が磨かれる
・面接や集団討論だけでなく、小論文試験でも有利になる理由は
・ディベートに苦手意識がある子も活躍できるコツとは