子どもの話を聞くことが大切と分かっていても、忙しい親は「聞くふり」「聞くだけ」になりがちです。反対に多少余裕があると、ついアドバイスしたくなり、子どもの話を横取りしてしまうことも。こうしたことが続き、わが子との関係が悪化しているという人も少なくありません。何をどう改善すれば、関係を改善していけるのでしょうか。大阪市立大空小学校の初代校長を務め、現在は講演や執筆活動を通して教育に関わる木村泰子さんに聞きました。
【年齢別記事 小学校高学年のママ・パパ向け】
(1) 関係悪化の高学年親子 意識したい、助言のさじ加減 ←今回はココ
(2) 焦りは逆効果、中学での内申点につながる力どう育む?
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「痛いほど分かります。私もそんな親でしたから」
木村泰子さんは初代校長を務めた大阪市立大空小学校で、特別支援対象となる児童も含め、すべての子どもの個性を認め合い、同じ教室で学ぶことが当たり前の環境をつくってきました。その結果、不登校児はゼロに。他の学校になじめなかった子が自分の居場所を見つけて成長していける学校づくりは話題になり、ドキュメンタリー映画にもなりました。
そんな学校をつくり上げた木村さんに、「忙しくて子どもの話をゆっくり聞く余裕がない。子どもに何か言われても途中でさえぎり、正論を先に言ってしまう」といった親たちの悩みを伝えると、「痛いほど分かります。私もそんな親でしたから」と、意外な答えが返ってきました。
木村さんには成人した2人の娘がいます。子どもたちが高学年の頃は教師として充実期を迎え、仕事に追われる日々でした。
「そのため、子どもから『明日、学校に行くの嫌だな』なんて言われると『私も忙しいのに』とブチキレてしまっていたんです。親としては失敗ばかりしてきました。ですから、これからお伝えするのは私の子育ての成功体験ではありません。45年の教師生活、とくに大空小学校で実践してきたことを踏まえ、私が今親だったらこうする、皆さんにもお勧めしたいことをお話しします」
木村さんはまず、高学年が置かれている状況を次のように解説します。
「高学年は小学校の中でリーダーとして下の学年の子を一生懸命引っ張り、疲れています。学校で自分らしさを出せない子もいます。学校や塾、習い事、子ども同士の付き合いの中で理不尽な経験をすることもあります。そんな子どもたちがリフレッシュできるのが家です。外で理不尽な思いをしても、家では自分らしくいられる。親が話を聞いてくれる。このようなバランスが取れていることが、高学年の子に必要な環境です。
しかし、親との関係が安心できるものではなく、家庭が子どもにとって安全地帯ではない場合、子どもは自分らしさを解放できません。親に話をしようとしても、過去の私のようにブチキレられたり、正論で説得されたりすると、次からは言おうと思わなくなります。
何を話しても受け止めてもらえるという感覚を持てないでいると、子どもは自分を守るために嘘をつくようになることがあります。また、思春期以降、親から自立した後に、困ったことがあった際、誰かに助けを求められず、孤立してしまう恐れもあります」
だからこそ、親は「この子の話をすべて受け止める」という意識を持って、子どもの話を聞く必要があると木村さんは話します。そうはいっても、忙しい親にとって子どもの話を聞くのはとても難しいことです。それは、子どもが心の底にある「本題」を言い出すまでには、時間がかかるからです。
・親が高学年の子の話を聞いたり助言したりする際の作法
・子どもの話を聞いたときのNGワード
・子どもの話を聞くときにかけたい「3つの言葉」
・目指すは「復元力」のある親
