「高専」という略称で知られる高等専門学校。誕生してから60年がたった今、日本だけではなく、海外でも注目されるまでになりました。2023年4月には、徳島県に私立の「神山まるごと高専」が開校予定で、衣料通販大手ZOZOの元最高技術責任者(CTO)が初代校長に就任し、話題を呼んだこともあり、高専について気になる人は少なくないかもしれません。今回は、高専が一般の高校とどのように違うのか、また高専が力を入れる教育とはどのようなものか、といった点について、長岡工業高等専門学校で環境都市工学科教授を務める村上祐貴さんに聞きました。(DUAL特選シリーズ/2022年12月28日公開記事)

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専門技術以外に、高専生が企業から重宝される理由がある

 高専という略称で知られる高等専門学校。1962年に誕生し、15歳から20歳までの5年間の教育を通して実践的・創造的技術者を養成する工業系の学校のことを指します。入学当初から専門科目の授業を受けることができ、学年が上がるにつれ段階的に専門科目の授業数が増えていくといった、いわゆる「くさび型の教育」であるのが特徴です。専門科目は主に、機械・電気・情報・化学・土木などの工業分野と商船分野の2種類に分かれています。

 現在、全国に国公私立を合わせて57校あり、全体で約6万人の学生がいます。2023年4月には、19年ぶりに徳島県に私立の「神山まるごと高専」が開校予定で、初代校長は自身も高専出身で衣料通販大手ZOZOの元最高技術責任者(CTO)が就任して話題を呼んだこともあり、今、高専に熱い視線が注がれつつあります。また、国内のみならず、19年にタイで日本の高専教育を導入した国立高専が開校するなど、海外でも高専の教育システムが注目されているようです。

 以前から存在する高専がなぜ、今の時代に注目度を増しているのでしょうか。新潟県にある国立高専の長岡工業高等専門学校で環境都市工学科教授を務める村上祐貴さんは、その理由を次のように話します。

 「今存在する職業が10年後、20年後にはなくなってしまう可能性があるほど、世の中は不透明でかなりのスピードで移り変わっています。そんな中、自分の武器を身に付けておくと、この先時代や職業のあり方が変化しても、柔軟に自分の人生を切り開き、生き残ることができます。将来のためにも早いうちから子どもに『ものづくり』のスキルを身に付けさせたいという親の思いが、近年高専が注目される理由なのではないかと感じています」

 国立高等専門学校機構が発表した22年版の広報誌「国立高専機構 概要」によると、国立高専生の就職率はほぼ100%で、求人倍率は20倍を超えるほど引く手あまたなのだそう。実は、高専生が企業に重宝される理由は、専門的な技術や知識があるからだけではないようです。「アントレプレナーシップ(起業家精神)をはじめ、今まさに社会が求めているスキルを、高専での教育で得ることができるからだと考えています」と村上さんは言います。詳しく聞いていきましょう。

この記事で読める内容
・高専にはどんな学生が集まる?
・学ぶ内容、男女比…一般の高校との違いは?
・長岡高専では、卒業後に就職するのは3割程度。他の進路は?
・高専生の求人倍率が20倍ってホント?
・なぜ高専でアントレプレナーシップが身に付けられるのか
・取り組むべき高専の2つの課題とは?