久々の家族4人同居生活に一苦労

 母は、看護師でした。父も働いていましたけれど、どちらかと言うと母が一家の大黒柱。たくましく、強い人でしたね。対して父は、いつもお酒を飲んで酔っ払っているような人。父と母は、しょっちゅうけんかしていましたし、折り合いが悪いまま今に至っているという感じです(笑)。

 私は幼い頃から、「普通の子」。特別に目立つ存在でもなく、クラスの中でみんなの笑いを取っていたわけでもない。そんな私に対して、母は常々「自分が好きなことが見つかるといいね」と言って、やりたいことをやらせてくれていたほうだと思います。

「母は昔からたくましい人だな、という印象です」
「母は昔からたくましい人だな、という印象です」

 両親と姉が住む実家に帰省したのは、コロナ禍がきっかけでした。仕事が減り、都内で暮らすマンションの家賃支払いが難しくなってしまったからです。

 20数年ぶりに家族と同居してみたら、母は初期の認知症になっていた。父は相変わらず酔っ払いだし、姉もマイペースだし……と途方に暮れました。親はいつまでも元気でいてくれたらいいなぁと思っていましたし、いつか同居するのかしないのかについては、あまりちゃんと考えたことがなかったですね。

 もしもコロナ禍がなければ、実家で一緒に暮らす流れにはならなかったかもしれない。けれど、親の高齢化を目の当たりにしたり、認知症なのかもと異変に気付いたりするときは、いずれどこかのタイミングで来たと思います。それがたまたま、今だったというだけのこと。

 少しでも栄養のあるものを食べてもらおうと、煮物などを作って容器に詰めて冷蔵庫に入れておくと、それを見つけた母は「誰が作ったか知らない煮物が冷蔵庫に入っていて不気味なんだけど」と、言っていました。

 それでも私が今、家族と同居しているのは「母が好きだから」。この一言に尽きます。酔っ払いの父親のためには、あれこれしてあげたいとはあまり思わないんですけれど(笑)。