(上)では、タレントとして活躍する春香クリスティーンさんに「新しい挑戦はしたい、でも一歩前に踏み出す勇気が出ない」という悩みにアドバイスをもらいました。今回は、春香さんが単身来日したきっかけや、2018年に一時芸能活動を休止して経営の基礎を学んだり、語学力を生かして派遣社員として働いたりした際の気持ちの変化について聞きました。
(上)「時には、不安を手放すことも必要」
(下)活動休止→派遣社員で気づけたこと ←今回はココ
「おひとりさま」文化に憧れ16歳で単身日本へ
私は今年31歳になりました。16歳のときに生まれ育ったスイスから単身来日したので、もうそろそろスイスで過ごした時間と、日本で生活した時間が半々になりますね。
父は日本人、母はスイス人です。幼い頃から「日本で暮らしたい」と言い続け、「家族みんなで日本に移住しよう」と持ちかけたこともあります(笑)。幼少期から中学3年生くらいまで、平日はスイスの学校に行き、毎週土曜日に日本語教室へ通学して日本語を学ぶ生活を送っていました。ハードな学生生活でしたが、それでもやめなかったのは、どうしても日本で暮らしたかったから。
どうしてそこまで日本に憧れたのか。父が日本人というルーツも理由の一つではありますが、何より日本人がまとっている「空気感」に心引かれました。
スイスは、多くの外国と同じように「自分の意見は、きちんと主張する」文化。私には、それがどうしてもなじめなかったのです。特に幼少期は、自分の気持ちを言えず、いつも押し殺していました。クラスメートに「自分の意見を言わないと、何を考えているのか分からないよ」と言われたときは、何だか責められているように感じて苦しくなったこともあります。
人とうまくコミュニケーションを取るのが苦手だった私は、クラスでも1人で静かにしているタイプ。けれどスイスでは1人でいると目立ってしまう。当時はそれがとてもつらかったですね。
一方で、日本は相手の気持ちを「察する」とか「空気を読む」人が多い傾向にあると感じますし、「おひとりさま」でいても、その行動を尊重してくれる気がします。小学校高学年のとき、数日間だけ日本の小学校で授業を受けたことがありますが、クラスの中に1人で過ごしている子がいて驚いたのを覚えています。なぜなら仲間はずれにされている様子もなく、寂しそうでもなかったから。
スイスの学生生活で抱いた「ここは自分の居場所ではないのかもしれない」という思いは、現実逃避に近かったかもしれません。けれど、日本には「きっと私の居場所がある」と、明るい希望を感じていました。