前編では、「結婚しなくてはダメですか」というお悩みに対して、お笑い芸人のふかわりょうさんにアドバイスを聞きました。後編では、芸人としての方向性に立ち止まったときがあったこと、さらに執着心を手放したきっかけとなったエピソードを聞きました。
【前編】ふかわりょう 結婚する、しないにとらわれないで
【後編】ふかわりょう 方向性に疑問、仕事激減するも後悔なし ←今ココ
幼少期からあったMCの素質
小さい頃は、今のキャラクターからしたら意外かもしれませんが、活発で目立つ子どもでした。クラスの中では、場を和ませる役目でしたね。固い存在である先生を、どうにか柔らかくしたい。次第に打ち解けていく様子に喜びを見いだしていました。
クラスの中を、一歩引いて俯瞰(ふかん)した視点で見る役目でもありました。お調子者の生徒がいれば、先生に叱られるギリギリのところを見張っているというか。それらは、お笑い界で言うところの「裏回し」といって、その場の意図をくみ取る縁の下の力持ち的な役割に似ていました。そこに自分の居場所を見つけていたかもしれません。
今テレビ番組でMCの仕事をしていますが、学生時代に通じるものがあると思います。さまざまなタレントの方と会いますが、「世間が抱いているパブリックイメージとは違う音色をお茶の間に届けたい」と考えながら接しています。学生時代は、いわば訓練の場。今の原点だったようにも思います。
中学生の頃までは成績もそれなりによかったし、運動もできた。1番でいることが当たり前だと思い込んでいたのですが、高校生になり「1番でいることに何の意味があるのだろう?」と疑問を持ち始めたんです。
足が速くても、年を重ねれば衰えてくる。では、年を重ねることで趣(おもむき)や味わいを増すものは何だろう? と考えたとき、僕にとってそれは「お笑い」と「音楽」でした。
幼少期からピアノを習っていたものの、ピアニストとして大成するには現実的に難しい。「であれば、お笑い芸人になろう」と決意しました。それが高校2年生のとき。当時はお笑い芸人といっても、今のようなさまざまなフィールドに分かれておらず、「お笑い芸人=テレビに出る人」。テレビの中にいる人になりたかったんです。
しかし、テレビでお笑い芸人の人たちを見ていると、「ひょうきんで、ふざけている」だけでは務まらないと感じ取っていました。テレビの中で長く活躍し続けるのは、面白いことを言ったり変なことをしたりする以外の「何か」が必要だと。
そこで「戦略的」に大学へ進学することにしました。今では大学卒の芸人も珍しくありませんが、当時の風潮からすると変わったルートだったと思います。その後、大学在学中の20歳でお笑いの門をたたいたので、就職活動は一切していません。そこに迷いはなかったですね。