テクノロジーとジェンダーのテーマを中心に作品を作ってきたアーティストのスプツニ子!さん。その活動はアートにとどまらず、DE&I推進を掲げたスタートアップの起業にも広がっています。そんなスプツニ子!さんの視点を探ります。
ヒラリーさんを囲んだお茶会で……
2022年10月、元米国務長官のヒラリー・クリントンさんが来日し、米国大使館公邸でヒラリーさんを囲むお茶会が開催されました。私も招待していただいたので参加してきました。話題は米国で行われる中間選挙や日本におけるジェンダー格差、女性のエンパワーメントなど多岐にわたりました。
米国ではアファーマティブアクション(積極的差別是正措置)が広がっています。私が米マサチューセッツ工科大学(MIT)で働いていたときも、白人以外の人種や女性など、多様な背景を持つ教員採用の議論が行われていました。構造的差別を打ち壊すには、意識して動くことが必要だからです。
でも、日本では女性自身がこうした措置に対して「優遇されているようで嫌」と感じてしまうケースもあり、構造的差別に対する理解が社会全体でまだ進んでいないと私は感じています。「アファーマティブアクションを『逆差別だ』と言う人には、どういうふうに声を掛ければいいでしょうか」という質問も上がりました。この質問に対してヒラリーさんはこう回答しました。「アファーマティブアクションは、長年にわたって差別を受けてきた人々が平等な機会を享受するための重要な手段です。例えば、過去に差別的な政策や構造が存在したために、特定のジェンダーや人種が教育、雇用、住宅などの重要な分野で不利な状況に置かれています。偏っている構造の中での『平等』は『公平』な機会を生みません。社会構造の偏りを早く是正するために重要な措置だと伝えましょう」