令和の時代を、ときに迷いながらも前に突き進む起業ママや副業ママたちの挑戦を紹介する本連載。第5弾で登場するのは、2010年に家業を継いでアパレル会社を経営する傍ら、20年から複業としてコスメブランド「mukii(ミューキー)」を立ち上げて商品の企画・販売をする大野真理子さん(43歳)です。コスメブランドを立ち上げた思い、2児の子育てと2社の経営を両立する上で工夫していることなどについて聞きました。
今SNS(交流サイト)で注目されているのが、美容インフルエンサーの大野真理子さん。「皮膚の変態」を自称するほどスキンケアやコスメについて知識が豊富です。夫と共同経営するアパレル系企業では、通販事業を展開するほか、東京都や大阪府、愛知県などに19の店舗を展開し、50人の従業員を束ねています。2010年に家業だったファッション小売店を引き継ぎ、独自の戦略が当たって人気を集めたことがきっかけで新たにブランドを立ち上げるなど、事業を大きく発展させる傍ら、18年には美容業界にも進出しました。
プライベートでは小6の娘と小2の息子を育てる2児のママ。出産後も仕事をセーブするのではなく、むしろアクセルを全開にしてきた大野さんは、子育てと経営をどのように両立させているのでしょうか。
「同じ物なのになぜ価値の違いがあるのだろう」
首都圏の商店街で地元の人向けにファッション小売店を営む両親のもとに生まれ育った大野さん。幼少期から家族や親族が貸衣装店やかばん店などを営む姿を見てきたため、「自身も将来は物を売るのだろう」と、02年に大学を卒業した後は家業の小売店で働き始めました。父親は生粋の商売人で、大野さんが子どもの頃から、毎晩仕事の話を赤裸々にしていたといいます。大野さんの経営手腕は、実はこうした父親との会話を通じて磨かれたのだそう。
「父の仕事の話を通して、よく物の価値について考えさせられました。ミーハーで流行に敏感だった私は子どもの頃からファッション雑誌を読んだり、コレクション(ファッションショー)を見たりするほどファッションが好きでした。スーパーモデルが1着15万円のハイブランドセーターを着ているのを見てわくわくすると同時に、父が売る1着2000~3000円のセーターと比較して『同じ物なのに、なんでこんなに価値の違いがあるのだろう』と子ども心に疑問も持っていたんです。
同時に、商品に付加価値を付けるにはどうすればいいのかということにも興味があり、『こういう広告が人の心に刺さる』『こういうふうに見せられると欲しくなる』といったように、日常生活の中で効果的なPR法を研究する習慣がありました。子どもの頃からのそうした積み重ねが強みになり、今の経営に生きていると思います」
03年に大野さんは、小売店で販売する商品とは別に、自身が直感でいいなと思った商品を仕入れて通販で売ることに挑戦。ワンピースとブラウス、2着のみの仕入れから始まった通販事業は数カ月で軌道に乗り始めましたが、当時から人気ブロガーだった幼なじみが、大野さんが販売している商品を通販ページのリンクと併せて紹介してくれたことが引き金となり、売上高が急激に伸びたと言います。
「このとき、今でいう『インフルエンサー』が商品を紹介するのは有効であることに気づきました。現在は当たり前のように行われている販促手法ですが、当時はあまり普及していなかったこの方法を一足先に実践できたことが、今につながっていると感じています」
紹介をきっかけに、安定的に通販事業の売り上げを伸ばしていった大野さんは、今度は自社のオリジナル商品を販売することを試み、05年に20~40代女性向けの新しいファッションブランドを立ち上げました。