令和の時代を、時に迷いながらも前に突き進む起業ママや副業ママたちの挑戦を紹介していきます。第4弾で登場するのは、米国と日本の中高生向けに開発したデジタル教材「InterEd(インターエド)」を提供する大洲早生李さん。後編の今回は、新規参入した教育テック事業をつてが全くない状態からどう拡大し、4児の子育てと会社経営の両立をいかに可能にしたのか、詳しく語ってもらいます。

前編 離婚を機に3児を連れ米国移住 教育事業に挑む思い
後編 自律を促す家庭教育が4児育児と会社経営を可能に ←今回はココ

課題解決力や起業家精神を学ぶオンライン教材を開発

 米国への移住後、グローバル人材の育成事業にも力を入れ始めた大洲さん。教育研修を受けるビジネスパーソンたちが、多様な文化背景を持つ人たちとコミュニケーションを取りながら仕事をする苦労を目の当たりにし、「世界で活躍するためには、若いうちからグローバル教育やSTEAM教育を学ぶことが不可欠」という思いが強まりました。

 留学プログラムを軸にした中高生向け教育事業に取り組み始めた直後、2020年3月に新型コロナウイルスの影響で計画が頓挫し、売り上げの柱だった海外マーケティング支援の仕事も相次いでキャンセルに。そこで大洲さんは、20年4月からオンラインをベースにした教育教材の開発に着手し、「InterEd(インターエド)」の開発に取り組みました。

 インターエドは、STEAM教育の要素も取り入れ、グローバル人材育成を目的としたオンライン教育教材です。例えば、ドローン技術を活用して人道支援を行うジェシー・ムーベリーさんや、環境問題に取り組むために給水アプリを開発したロビン・ルイスさんなど、社会課題の解決に取り組む社会起業家などを題材に、課題発見から解決までの「イノベーションプロセス」を学びます。動画やスライド、ワークシートを活用しながら、「課題解決のためにどうアクションを起こしていけばいいか」などについて生徒同士が議論することで、課題解決力や起業家精神などを身に付けることができるといいます。

 「現在は、主に日本で同志社中学校や関西学院千里国際高等部などの私立校を中心に、公立校にも提供しています。中学・高校の総合学習や英語などの授業で活用されており、1セッション約50分、月4回の授業で2~3カ月の学習期間を目安に1つのテーマに取り組みます。21年、22年には経済産業省『EdTech導入補助金』の対象事業として採択されました。

 また、オプションで、社会課題解決のために働く海外の専門家や起業家から生の意見が聞ける機会も設けています。インターエドに取り組んだ生徒へのアンケートでは、約8割が『学習した社会問題に対する理解』や『起業やテクノロジーで社会にプラスの変化をもたらすことに対する理解』が深まったと答えてくれました」

関西学院千里国際高等部の授業で生徒が議論したことをまとめて、発表している様子(2022年10月撮影)。「ファシリテーターを務める教師のための指導案の提案や生徒が取り組むワークシート、カスタマーサポートなどの指導者支援も行っています」(大洲さん)
関西学院千里国際高等部の授業で生徒が議論したことをまとめて、発表している様子(2022年10月撮影)。「ファシリテーターを務める教師のための指導案の提案や生徒が取り組むワークシート、カスタマーサポートなどの指導者支援も行っています」(大洲さん)