2023年度の中学入試が概ね終わりました。男女御三家をはじめとする難関校ではどんな問題が出題され、どのような力が求められたのでしょうか。連載でおなじみの中学受験プロ家庭教師・西村則康さんが23年度入試の傾向を分析。これから中学受験を迎える小学生が、今後どのような学習をしていくべきか、アドバイスをもらいました。
難問よりも今ある知識を組み合わせて考える思考問題が定着
新型コロナウイルス下での受験も3年目を迎えた2023年度中学入試。今年の受験生は中学受験の勉強が本格的に始まる4年生のときから、常に新型コロナに振り回された「フルコロナ世代」でした。通常とは違う環境の中で難関校を目指した子どもたちに、各校はどのような問題を出してきたのでしょうか? 西村さんは次のように話します。
「コロナ下受験も3年目となった23年度の入試は、特に大きな混乱もなく実施されました。今年の難関校の入試は、必要とされる知識自体はそれほど高度なものではなかったように感じます。そういう点は易化という見方ができますが、一方でどこの学校も思考力や表現力を重視する内容にシフトチェンジしています。この傾向は4年くらい前から見えていましたが、昨年度の入試で各校がはっきりとその意思を見せるようになりました。今年も同傾向の問題が多かったことから、今後はこの路線の問題が定着していくでしょう。
全体的に言えるのは、どの教科においても問題文が長くなっているということ。また、算数や理科では、導入やヒントにあたる小問から始まり、だんだんと深く考えさせる誘導形式の問題が増えました。もともと麻布中学校(東京・港)や渋谷教育学園幕張中学校(千葉市)など思考系の問題を出していた学校ではこのような問題形式でしたが、今年は他の学校でも多く見られるようになりました。問題条件の数が増えたり、資料の読み取りが複雑化したりと、粘り強く正確に読み取る力が求められているように感じました。
また一見、塾で学習した定型問題のように見えて、よく読み込まないと勘違いをしてしまうなど、ちょっとした『気づき』が必要な問題も多く見られました。その場の対応力が鍵となり、覚える学習ばかりしてきた子には厳しかったと思います」
