日本人の私たちにとって、とても近くて親近感を抱く台湾ですが、2022年のジェンダーギャップ指数は世界146カ国中35位、日本は116位です。日本と比べて「女性だから」という理由で背負うべきものはずっと少ないそうで、そんな社会環境は男性にとっても居心地がいいのかもしれません。台湾に11年間暮らすノンフィクションライターの近藤弥生子さんが感じた、日本との違いについて伝えてくれました。
10年ほど前に台湾で働き始めて驚いたのは、「お茶出しは女性がするもの」、「接待には女性が同伴する」といった概念があまりないように感じられることだった。
訪問先で飲み物を出してくれるのが男性であるということも多いし、接待でトップに同伴するのは何らかの事業やプロジェクトの責任者であることが多い。少なくとも「お酌などで場を和ませる担当」としてどちらかの会社の女性社員が登場するということはほぼなかった。「ジェンダーに関係なく、適している人がその役割を担う」という価値観が浸透しているように、私には思える。
もっとも、私が働いていたのは多様性が重視されるデジタルマーケティング業界だったから、製造業や士業といった歴史のある業界ではまた違うのかもしれない。
組織のトップに女性がいるのはごく自然なこと
企業に勤めていたときの取引先や、個人でライターやコーディネーターとして取材で訪れる企業や官公庁で、トップが女性であることがよくあるのにも最初の頃は驚いたものだ。
デジタル担当大臣のオードリー・タンさんを政府に引き入れた前大臣のジャクリーン・ツァイさんも女性で、プライベートで2人の子どもを育てあげた母親でもある。大臣を退任し、自身の弁護士事務所を構えるジャクリーンさんをインタビューしたとき、子育てしながら仕事でも並々ならぬ実績を積んできた彼女が、自分の子どもたちについて話すときにはふと母親の表情になったのがとても印象的だった。
新型コロナ禍に最前線で対応に当たる政府組織をNHKドキュメンタリーの取材で訪れたときも、陣頭指揮を執る部署のトップは女性だったし、カメラを入れさせてもらった各部署の責任者会議も、10人程度の参加者のうち半分くらいが女性だった。
性別役割分担の逆パターンにも要注意
「男だからっていつも力仕事を命じられて、キツいんですよね」――ポロッと台湾人男性の友人がこぼしたことがある。その彼の上司は姉御肌の日本人女性で、おそらく無意識に、悪気なしにそうしているのだと思う。彼のことが気の毒になりつつも、なるほど(女性が男性に役割を押しつけるという)逆のパターンもあるのだから気を引き締めなければと、背筋が伸びる思いだった。