リピーターが多く、日本からの人気が高い渡航先である台湾。観光客が感じる魅力は、近いので気軽に行ける、日本とも交流が深い、食べ物がおいしい……といろいろありますが、住んでみると「働く女性に優しい」という別の側面があるといいます。台湾に11年間暮らすノンフィクションライターの近藤弥生子さんが、素顔の台湾を紹介する連載が始まります。

 駐在員との結婚がきっかけで台湾に移住したのは2011年の2月、東日本大震災が起きた前月のこと。以来、妊娠・出産、現地企業への就職、別居、離婚、シングルマザー生活を経て、台湾人と子連れ再婚、起業、2人目の出産……と、思いもよらない人生を送ることとなった。東京の出版社で編集者として働いてきた私は、台湾で自分の価値観を揺さぶられ、呪縛が解けたかのように自由に生きるおばちゃんとなった。

新卒でも新人でも生理休暇を取得する台湾女性たち

 11年間の台湾暮らしで価値観がガラリと変わったことはたくさんあるが、その最たるもののひとつが、生理に対する考え方だと言っていいだろう。台湾でともに働いた同僚や部下たちは、自分が新卒であろうが、中途入社したばかりの新人であろうが、「それとこれは別」と言わんばかりに堂々と生理休暇を取得する。なかには中途入社の出勤初日でも「生理が来たので明日から出社します」という人もいた。

 そんな彼女たちを見ているうち、私自身も生理で体調が悪いときは無理をしないようになっていった。「今、生理なの」と言うだけで、周囲の同僚や友人たちがホットココアやチョコレートを差し入れしてくれた。おなかが痛くてつらいという自分の状態を隠さずに打ち明け「今日ばかりは弱っているので、いろいろな粗相をお許しください」という体を示すことができると、とても楽になれるのだということを知った。

「生理が来たら鉄分を摂取」体を冷やさない知恵

 台湾では、老若男女問わず飲食を通じて体調を整える生活の知恵が広く浸透している。風邪を引いたときや生理の時期にはスイカなどウリ科の食べ物や、コーヒーやビールのように利尿作用があり、いわゆる「体を冷やす食材」は摂取しないのが鉄則となっている。代わりに生理中に不足しやすくなる鉄分を補うことのできるカカオや小豆を使ったスイーツなどを積極的に摂取することが常識なのだ。

 カカオはチョコレートやココアで摂取できるし、小豆も台湾ではかなりポピュラーな食材として、さまざまな場所で食べることができる。たとえば台湾の代表的なスイーツである豆乳で作ったプリン「豆花(トウファ)」のトッピングにも使われるし、スイーツ店にぜんざいが置いてあることも多い。

街中の猫も、心なしかのびのびしているような
街中の猫も、心なしかのびのびしているような