「○○のほうが幸せ」「みんなに△△だと思われたい」「□□すべきではない」…社会が変化しても私たちの周り(時に脳内)にしぶとくはびこり、心から望む選択や前向きな行動を阻む「物言い」の数々。そんな、女性にかけられたさまざまな「呪い」の正体を、湯山玲子さんが看破していきます。
街にあふれる雑貨屋は女性たちで大盛況…
どうして、こんなに雑貨屋が多いんだ? 店はいつもカフェオレボウルやポップなプラスチックのナイフやフォークを物色する女性たちでにぎわい、本物志向の店では、女性誌が火を付けた粉引の皿だとか、インバウンドでもバカ売れしているという、色を付けた南部鉄瓶などを奥様方が眺めている。
こういった雑貨は、1回買えば数年は持つものなのに、それでも次々と新しいモノを買いそろえたいと考えるのは「日々の暮らしをきちんと充実させて、丁寧な生活を実践したい」という思いからだろう。その背景には、バブル期の後、今まで継続している不況と少子高齢化がある。要するに、外出するとカネがかかる。夜遊びでパリピする体力もないし、体が資本だから健康第一ってことです。
働いて自分の自由になるおカネが手に入ることとなった女性たちが、飲んだり食べたり、旅行したり、ゴルフやスキーなどに熱中したのが、「キャリアとケッコンだけじゃ、イヤ」という絶妙なキャッチコピーと共に創刊された雑誌「Hanako」に象徴されるバブル期だった。その反動が、刺激的だがコストがかかる外よりもおウチに重きを置く「生活重視」に移行したのはさもありなん。早寝早起きで体調を整え、きちんと丁寧な生活を送れば、心も豊かになる、ってね。
しかし、この「良きこと」が女性にとっての呪いだ、と言ったら? そう、「呪い」というものは、通常、表向きには良い顔を見せる。普段は優しくて、みんなに愛されている女性が、深夜、丑(うし)の刻に出かけて行って、わら人形に五寸くぎを打ち付けるがごとくであり、「気がついたら、呪われていた」というのが呪いの定番だからだ。