「○○のほうが幸せ」「みんなに△△だと思われたい」「□□すべきではない」…社会が変化しても私たちの周り(時に脳内)にしぶとくはびこり、心から望む選択や前向きな行動を阻む「物言い」の数々。そんな、女性にかけられたさまざまな「呪い」の正体を、湯山玲子さんが看破していきます。

「女性性を謳歌する格好=はしたない」という暗黙のルール

 「ちょっと、この服、肌が出過ぎ!」「体にピッタリし過ぎ」と、試着した服を売り場に戻した覚えのある女性は、少なくないだろう。特に、グローバル展開をしているファストファッション、私が愛用しているZARAなどでは、ほとんど水着のようなトップス、「下着が透けて見えて、それが何か?」といったようなワンピース、小股どころか太ももの上まで切れ上がったスリット入りのスカートなど、日本の事情などお構いなしのデザインがあふれかえっている。それらが意味するのは、宗教的教義の制約モラルがあるところを除いて、世界では女性は肌を出し、女性的な体のラインを強調しているのが普通、だというリアル。

 ちなみに、私はショップチャンネルで、OJOU(オジョウ)というファッションブランドを主宰し、デザイナーをやっているが、司会者の定番セールスワードは、「二の腕をカバー」や「おなかを目立たせない」と、「体の線を拾わない」「透けない」「胸元が開き過ぎない」などなど。そして、これら身体のコンプレックスとセクシー回避の物言いは、確かに消費者である女性たちの心をつかんでいる。

 というわけで、今回は「肌を露出することは、はしたない」という、「日本女性のファッションにおける暗黙のルール」という呪いをひもとこうと思う。

 女性は思春期を迎えると、大きく体が変化していく。胸とお尻が大きくなり、初めて生理を迎えるわけだが、この変化を「やっかい」と捉える空気が日本では濃厚なのだ。若い世代では薄まっていると思いきや、大学の教え子の話を聞くと、SNSを騒がせているセクハラや性被害などの影響か、そのあたりは変わっていないようだ。

 そりゃそうだ、親からしてみたら、娘が性的な存在になり、男にうつつを抜かして望まぬ妊娠に至ることは、避けたい事柄だし、体をオヤジに売ったり、痴漢やレイプなどという性的暴力に遭ったりするリスクを回避させるためには、「これから、大人っぽくなるんだから、どんどんセクシーさを強調して、魅力的な女性になりなさーい」というような体の変化に対する祝福はかけることが難しいだろう。

 具体的には、パンツが見えるようなミニスカート、体にピッタリしたトップスなど、女性性を謳歌し強調するような格好には「はしたないからダメ」という指導が入る。女の子にとっては、体の性的変化は、「はしたない」という言葉と共にあり、それらは親から娘へ、またそういう言葉を同様に受けた娘たちの間での共通認識となってしまう。加えて、徹底的に性を排除する制服(その半面、ブルセラなどの性的記号と化すところが皮肉だが)の身体感覚などからも、内面化されていく。

 しかし、そんな「守り」の図式も、女の子を取り巻く社会の状況が、セクシーに変化した女の子を歓迎し、賛美する方向にあるのならば、状況は違ってくる。

※ブルマーとセーラー服からの造語。雑誌グラビアの衣装としてのブルセラや中古制服を扱うブルセラショップが、1990年代に社会現象となった。

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