「○○のほうが幸せ」「みんなに△△だと思われたい」「□□すべきではない」…社会が変化しても私たちの周り(時に脳内)にしぶとくはびこり、心から望む選択や前向きな行動を阻む「物言い」の数々。そんな、女性にかけられたさまざまな「呪い」の正体を、湯山玲子さんが看破していきます。

幼児期に与えられる「赤ちゃん人形」が意味すること

 女にかけられた呪いの中で、最大級のものは何と言っても「子どもを産んで、子育てすることこそが女の幸せ」というものだろう。

 幼いときに赤ちゃん人形で遊んだ経験がある女性は多いだろう。「アナタは女なので、将来、子どもを産んで、育て上げることになる」という生き方の規範は、まずは物心つく前からの、女の子の遊びの現場から示される。女の子はお人形、男の子は車や電車の模型、という男女の区別は日本では伝統的に強いと言われているが、女子幼児に対しては「お母さんのまねをして赤ちゃんの世話をする」赤ちゃん人形というおもちゃが与えられるのだ。これ、私たち世代だけの流行と思いきや、現在でも絶賛継続中。イクメンが増加中の現在では、赤ちゃん人形で遊ぶのはもはや女子幼児だけではないのかもしれないが、商品のネーミングやスペックは完全に女子向け。

 実はワタクシ、この赤ちゃん人形が幼い頃、苦手だった。お友達は、お母さんのまねごとをして、人形をあやしたり、ご飯を食べさせたりして盛り上がっているのだが、自分にはその人形が不気味で(まあ、当時のデザイン感覚が悪かったのかもしれないが)どうにも、面白くない。私に人形熱が生まれたのは、タミーちゃんとバービー、その後リカちゃんがわが家にやってきてから。

 赤ちゃんの世話をするよりも、リカちゃんの洋服を作ったり、小芝居を考えたり、コーディネートしたりするほうが断然楽しく、仲間も増えたのだが、依然として赤ちゃん人形派も数こそ少ないが存在していた。それはもう、個人の性質の問題なのだが、問題は社会、男性の側に、女性の本質はなんだかんだ言っていても、赤ちゃん人形派つまり子どもを慈しみ育てる母親にこそあるのだ、という思い込みがあるというところ。いつまでもキラキラと遊んでいたいリカちゃん派は当時の感覚からも多数派だったのに、だんだんと社会に合わせて、女性はその欲望を抑圧するようになっていく。ファッションだけはキラキラを残すママは大勢いるので、誤解されやすいが、それは外見だけ、という話。

 そして、言うまでもないが、「子どもを産んで、子育てすることこそが女の幸せ」とは私自身、全く思っていない。「え? それでもそういう気持ちになったことは一度はあるでしょ?」という問いに関しても、答えはノー。

ついにワタクシが1年半水面下で温め続けていました、リーディンググラスが販売開始です。その名も《エニグマ》。古代ギリシャ語が語源で、その意味は「謎」。普段着をファッショナブルに演出する小道具、ノーメーク隠しにも大活躍します。バーニーズニューヨーク銀座本店、代官山蔦屋書店などで、店頭お見立てやトーク、イベントあり。遊びに来てね!!
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