劇画家でオペラ歌手の池田理代子さんと、音楽家で “少女漫画研究家”としての顔を持つ青島広志さんが少女漫画の歴史を振り返りつつ、ジェンダーの視点から漫画と音楽について語り合います。下編のテーマは、音楽や芸術分野における女性活躍。漫画が社会的に認められていなかった時代からの少女漫画ファンであり、時代の変化の中で実力と才能を磨きながら、長年活躍を続けてきた2人ならではの対談をお届けします。
(上)池田理代子×青島広志 「女に歴史は分からない」に反論
(下)池田理代子×青島広志 男性名義作の陰に女性作者の存在 ← 今回はココ
青島広志さん(以下、青島) 音楽界でも池田先生の影響力を感じることがあるんです。指揮者の西本智実さんをご存じですか?
池田理代子さん(以下、池田) はい。初めてお会いしたとき、「わぁ、オスカルだ!」と思いました。タキシード姿が美しくてかっこいいですよね。
青島 ロシアで賞を取った世界的な指揮者ですが、西本さんは自分がオスカルのように思っていらっしゃると思います。
日本女性で先駆けとされる指揮者の多くは、池田先生のオスカルの影響を受けているんです。ここ10年くらいは、服装も多様になりましたね。フリルやリボンのついた衣装で指揮をする人もいます。ただ実際のところ、音楽をジェンダーの視点でとらえるとどうでしょうか。例えば、マーラーやブルックナーといった演奏時間が極めて長い交響曲を、女性が指揮するとどのような感じでしょう。
池田 音楽的な才能やセンスに性別は関係ないですし、個人差があるので一概には言えませんが、一般論として音楽が壮大で長くなってきたときには、音楽の独特なリズムをずっと刻み続ける強靭(きょうじん)な体力が必要になりますよね。
青島 2時間くらい、絶え間なく指揮棒を振り続けることになりますものね。粘り強い女性が多いのは確かなんです。ただ、曲によっては体力面での違いがあると感じている人はいるかもしれません。
編集部(以下、略) 音楽業界でもジェンダー格差は顕著でしたか?