1月からNHKでドラマが始まった『大奥』のほか、『きのう何食べた?』などを手がける漫画家よしながふみさん。人生観や仕事観、過去作品への思いなどが、三百数十ページにわたってつづられた『仕事でも、仕事じゃなくても 漫画とよしながふみ』(フィルムアート社)も話題に。第2回では、「男女間の恋愛作品は描きづらい」と感じるよしながさんに、自身も経験した女性の生きづらさや日本社会に根付いた“男高女低”の深層心理について率直な意見を聞いていきます。
(1)よしながふみ 「女が差別される」社会で生きる道探した
(2)よしながふみ 多様性や社会の問題は、物語ににじみ出る ← 今回はココ
(3)『大奥』作者 誰もがマイノリティーでマジョリティー
「何とか仕事は辞めずに頑張っているよ」旧友からの手紙
編集部(以下、略) 2002年、よしながさんが発表した『愛すべき娘たち』は、女性の生きづらさとさまざまな愛の形を描いた5編の短編漫画集です。この作品には、「普通に」働きたいのに働けなかった女性たちのエピソードもあります。「自分が男だったら、さも寛容な男であるかのように、『働いてもいいけど、家のことはきちんとするんだぞ』と言う」「家計はダブルインカムになるうえ、自分は家事をしなくていい。こんなに楽なことはない」「(割を食っている)女は闘うしかない」というような会話は、よしながさんの高校時代の同級生との会話が基となっているそうですね。
よしながふみさん(以下、よしなが) 『西洋骨董菓子店』という私の作品が01年にテレビドラマ化されて、ドラマを見た高校時代の友達がはがきをくれました。「結婚しました」という報告と一緒に、「高校のときにあなたと話した家庭内の男女平等はなかなかうまくいかないけれど、何とか仕事は辞めずに頑張っているよ」という言葉が書かれていて。10年以上も前に話した話を覚えていてくれたことが、本当にうれしかったんです。それで漫画に描きました。
―― 学生時代、「仕事を持って自立する」と編集者を目指していた女の子・牧村が実は家庭の事情を持っていて、卒業後はいつしか当時の輝きを失い、誰かに依存する生活をしている。一方で、牧村に憧れていた同級生の佐伯は編集者になって……というストーリーは、よしながさんと同世代の40代、50代の働く女性が今読んでも共感する話だと思います。
よしなが 高校時代とはまた別の友達で、中学生のときにも1人だけ、人生とキャリアについて本音で話せる友達がいたんです。1980年代に10代を過ごした私にとって、「女が一生働く」のは高校球児にとってのプロ野球選手並みにハードルが高いイメージがありましたし、02年にこの作品を描いたときも、女友達が3人いたらその全員が一生働く女性になるのは難しい時代でした。
『愛すべき娘たち』は、女性が「一生働きたい」と同じことを言っていても、誰もが同じ志で言っているわけではないという話でもあります。牧村の場合は、過酷な家庭環境があったために、家の外で自分を必要としてもらえる恋愛に居場所を求めた。生きづらさを抱えた彼女たちに、どんな形でもいいから幸せになってほしいという願いも込めて描いた作品です。