23万人以上のリスナーを持ち、JAPAN PODCAST AWARDS殿堂入りの「歴史を面白く学ぶコテンラジオ」を手掛けるCOTEN代表取締役CEO深井龍之介さん。著書『世界史を俯瞰して、思い込みから自分を解放する 歴史思考』では、歴史から学び、物事への俯瞰(ふかん)的な視点の持ち方を得る“歴史思考”を提案しています。今回は偉人たちによって蓄積された知識である古典や哲学に触れながら、日ごろの迷いや悩みを解決するヒントを探ります。
(1)歴史思考:歴史を知れば現代に生きる自分を客観視できる
(2)深井龍之介「こうあるべき」が悩みを生む 断ち切るには ←今回はココ
(3)女性権利獲得の歴史に学ぶ 変化の過渡期に必要なもの
「右にならえ」で自分軸を持たずに生きることが難しくなった現代。僕たちは、日々あらゆる場面で選択を迫られ、大小さまざまな決断を繰り返しながら生きています。人生における選択肢が少なかった数十年前と比べると、自由で生きやすい世の中になった半面、「個としてどう生きるか」を問われ続ける厳しさにも直面しています。
日常の中で抱える迷いや悩みの根源をひもといていくと、「こうあるべきだ」という社会の常識から外れることへの不安や恐怖から生じる部分が大きいのではないでしょうか。そうした不安にとらわれすぎないようにするためには、無意識に自分を縛り付けている「当たり前」から解放されることが大事です。そこで有効なのが、古くから今まで読み継がれている「古典」です。なぜなら、僕たちが今、抱えている悩みの大半は、歴史上の優れた人物たちが、すでに考え尽くしているものだから。多様な価値観や視点の蓄積である古典から、今に通じる悩みを解決するヒントをたくさん見つけることができます。
もちろん答えが必ずしもあるとは限りませんし、答えそのものを探すのとも少し違います。そこから得たヒントをきっかけに、いろんな視点から自らの悩みとじっくり向き合っていく。それこそが、メタ認知能力を高めることにつながります。
ブッダに学ぶ「こうあるべきだ」の執着、どう断ち切ればいい?
無意識に自分を縛り付けている「当たり前」から距離を置きたいときには、「ブッダ」にまつわる古典の中にヒントがあります。ブッダの本名は、ゴータマ・シッダールタ。仏教の開祖であり、哲学者としても知られる偉人で、彼こそ古典史上、もっとも優れたメタ認知能力を持つ人物といえるでしょう。
「物事の前提を疑い、深く問い直す」ことが哲学の本質ですが、ブッダは「“私”の境界はどこにあるのか」と、自分の存在まで問い直したのです。彼は、苦しみとは自分の願ったことがその通りにならないことであるといい、コントロールできないものをコントロールできると思い込むことを「執着」と呼びました。つまり、苦しみの根源は、執着であるということです。では、どうやって執着を断ち切るのか?