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女性活躍 気になる数字

大卒既婚女性の子ども数増 今本当に必要な少子化対策は

ジェンダーギャップ解消で後れを取る国ほど、社会と家庭の男女格差が解消されるタイミングが大きくずれてしまい、少子化が進む

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日本が直面する重要な課題の1つが少子化対策。年始には岸田文雄首相が「異次元の少子化対策」を打ち出しました。東京都が所得制限を設けない子育て世帯への給付金支給や、都内保育所に通う0~2歳の第2子保育料を無償化する方針を発表するなど、さまざまな支援に向けて国や自治体も動く姿勢を示しています。働く女性を取り巻く「産む環境」や出生率の動向は、今後どうなっていくのでしょうか? 国立社会保障・人口問題研究所 人口動向研究部部長の岩澤美帆さんに聞きました。

少子化が進行する中、大卒以上の既婚女性の出生子ども数は回復

 日本では、2005年に女性1人当たりの合計特殊出生率が過去最低の1.26を記録。その後は1.3~1.4台で推移し、2021年には過去4番目に低い1.30に低下しました。

 岩澤さんが研究・調査に参加した「第16回出生動向基本調査(*)」(国立社会保障・人口問題研究所、2021年実施)によると、妻が、出産できる期間をほぼ終えた45~49歳で大学卒業以上という夫婦の子どもの数が前回2015年調査の1.66人から1.74人へ19年ぶりに上昇したことが分かりました。夫と妻の最終学歴別に妻が45~49 歳である夫婦の子どもの数を見ると、夫・妻ともにこれまで「大学以上」は平均値が低い傾向が見られましたが、今回の調査では、妻は他との差がやや縮小しています。

 岩澤さんは、大卒女性の出生数が増加している背景を次のように話します。

 「1990年代以降、女性の大学進学率が急激に伸びて働く女性の数が増える中で、結婚しない人、DINKsで仕事にまい進する人、仕事と子育てを両立する人というように、以前に比べれば人生の選択肢に多様性が出てきた結果だと私たちは見ています。女性活躍推進を行う大企業や公務員を中心に働き方改革が進み、育児と仕事の両立がしやすい環境の整備が進んだ組織ではそれらを両立する人が増えました。保育所が整備され、管理職向けにワーク・ライフ・バランスに関する教育や研修を行う企業も増えています。出産後も働き続ける人が周りに増えたことは、『会社を辞めずに子を産もう』という意思決定に大きな影響を及ぼしたはずです」

(*)調査時期:2021年6月現在の事実、調査対象:「令和3年国民生活基礎調査」で設定された調査区から無作為に選ばれた全国1000調査区に居住する18歳以上55歳未満の独身者と妻の年齢が 55歳未満の夫婦(妻が回答)。独身者調査:有効票数7826票、夫婦調査:有効票数6834票

 大卒で正社員(職員)として働く女性が増え、大卒の出生数が微増する一方、非正規雇用やパート、無職の女性の出生数は下がっていることで、結果的に上のグラフのように差が縮まったと岩澤さん。「将来の展望を描きづらい状況下の夫婦が、結婚や出産を諦めているという見方もでき、子どもが欲しくても経済的基盤を優先し、安定的な仕事に就けた人から子を産んでいるという可能性もあります」

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