世界経済フォーラムによるジェンダーギャップ指数16位(2021年、156カ国中)のフランスでは、2000年から、政党に男女同数の候補者擁立を義務づけるクオータ制を導入しています。経済分野でも、上場企業には2011年から「女性取締役比率40%」が義務づけられ、2021年10月からは対象が拡大されました。日本の一歩先を行くフランスですが、変革期だからこそ、葛藤や混乱も生じているといいます。パリ在住のアーティストでジャーナリストの永末アコさんがリポートします。

法がハンドルを切り、社会を変えていく

 フランスには中世の城塞がたくさん残っている。今見るからこそ幻想的な主塔は、しかし当時の戦いの厳しさも物語る。その地をつかさどる者は人並み以上に精神と肉体が強くなければならなかった。

 あれから何百年とたった今でも、その名残が社会にあるというのだろうか。「家父長制は強く構造化されている。変えることが複雑なのは、それが行動論理(思考)に基づいているからです」。フランスの公共経営経済開発研究所プロジェクト総務、ジュリエット・クラビエール氏は、2021年3月の経済誌レゼコーでこう語った。

 思考に基づいているがゆえに家父長制が続いているのであれば、法がハンドルを切り、社会を変えていくしかない。フランスは2000年に、政党に男女同数の候補者擁立を義務づける「パリテ法」をつくっている。 男女平等担当大臣のエリザベート・モレノ氏は、政府のサイトで「パリテは情けではない。クオータ制は政治を深いところから動かすもの。私たちは社会を変革する法の力を信じています」と語っている。

 実はフランスは1980年代にクオータ制に対して違法判決を出したことがある。