新規事業の立ち上げで「仕組み化」の重要さを学んだ

―― これまで、さまざまな部門・職種を経験されてきたのですね。

皆川 まさに「社内転職」を繰り返してきました。SEからスタートし、8年目にコンサルティング部署へ。自治体やメーカー、流通企業などをクライアントに、業務改善プロジェクトを手がけました。

「未知の仕事にチャレンジするときは、開き直るようにしていましたね」(皆川さん)
「未知の仕事にチャレンジするときは、開き直るようにしていましたね」(皆川さん)

 その後、新規事業としてテレビ通販事業の立ち上げ・運営、マーケティング組織でのサービス企画支援、社長業務秘書として広報活動に携わった後、2019年にNSSC社長に就任しました。シリコンバレーに拠点を置くNSSCでは、新技術や新サービスの調査・リポート、事業機会の発掘などに取り組んでいます。

―― 新しい部署で未知の業務に就く際、どんなマインドで取り組んだのでしょうか。

皆川 「知らなくて当たり前」と、開き直るようにしていましたね(笑)。「期待されているんだから絶対失敗してはいけない。うまくやらなければいけない」と気負わない。気負いすぎると、かえって失敗する。「失敗してもいいってことよね」くらいの気持ちで、自分をリラックスさせていました。

 知らないことは周りの人に教えてもらえばいい。ただ、教えてもらえるのは最初のうちだけだから、その「新人期間」は無駄にすまい、という意識は持っていました。「自分は何を知らないのかを知る」ことには一生懸命だったと思います。

 それでも、「教えてくれる人」すらいなかったこともあります。通販事業を立ち上げたときです。当時、「これからはシステム開発の受託にとどまらず、自ら事業を生み出していこう」という機運が高まっていて、現社長(当時は専務)が「女性だけのプロジェクトを創ろう」と、新規事業に乗り出しました。たまたまご縁があったファッションショー運営のプロの方々と手を結び、ファッション通販番組の運営にチャレンジすることになったんです。

 プロジェクトメンバーは4人。私は、ECサイト、仕入れ、倉庫管理、配送、コールセンターのシステムの構築・運営など、オペレーション全般を統括、会計も担当しました。当然、自社に運営経験者はいません。何もかも初めての経験なのに、指導してくれる人がいない。すべて自分で想像してプロセスを組み立て、提携するパートナーに投げかけてみては調整を図る、その繰り返しです。運営経験もなく、消費者から直接怒鳴られることもあり、とにかくがむしゃらでした。

 その事業は撤退という結果に終わりましたが、後につながる貴重な経験ができました。その1つが「仕組み化」の実践です。その前にいたコンサル部署では、お客様に業務改善や効率化の提案をしていましたが、実際に自分たちでやってみると、そう簡単にはいきませんでした。けれど、日々業務に追われながらも、ルーティン業務を簡素化して仕組みを整える。非常に手間ですが仕組みが整えば、後が楽になるということを身をもって学べました。

 そして、その「仕組みの整備」の経験は、NSSCの社長就任後も役立ちました。実は、社長に就任するときに、さまざまな事務作業を前任者から引き継ぎました。ただ、事務作業ばかりやっていると、方向性を決めたり新しい事業を考えたりする時間がない。そこで「この作業は本当に必要なのか?」と考えて、作業を洗い出し、業務やシステムを見直して簡素化しました。効率化のためのデジタル化も進めました。そうやって、自分の時間をつくったんです。

 そもそも引き継いだやり方は20年前に決まったもの。必要かどうかを判断するために、米国の法律や会計基準、税法などを随分勉強しました。このときのデジタル化のおかげで、コロナ禍の環境激変にもスムーズに対応ができました。やってきたことはすべてつながっていくものなんだな、と実感しています。

「デジタル化しておいたおかげで、コロナ禍の環境激変にも対応できました」(皆川さん)
「デジタル化しておいたおかげで、コロナ禍の環境激変にも対応できました」(皆川さん)