グローバル経営を学ぶなら、海外展開を目指す日本企業で
原 私はキャリア13年目で外資系銀行に転職しましたが、そこでの経験は非常に貴重なものでした。同じチームで13カ国のメンバーが働き、ダイバーシティに富んだ環境に刺激を受けました。米国の企業だったので、収益に対するこだわりが強く、それが個人の報酬にも直接リンクし、モチベーションにもなっていることを実感しました。
羽生 外資系を経験した後、再び日本企業に戻っています。
原 理由は2つあります。まず、日本発の海外展開に関わる仕事がしたかったこと。もうひとつは、意思決定の場で経営に近い仕事がしたかったためです。多くの場合、外資系企業で日本人が担うのは、日本の事業展開に限定されがちです。しかも、外資系の場合は米国や欧州の本社に決定権があるため、グローバルな枠組みのなかの日本という位置づけの仕事になります。
それに対し、グローバル展開を目指す日本企業で働く場合は、そうした展開自体を提案して自ら進めていくことができます。
羽生 これは意外ですね。グローバルに活躍したいなら外資系がいいという印象がありますが、逆に、日本企業のグローバル展開に関わるほうが、経営のアイデアそのものを提案できるチャンスがある、と。

原 むしろそのほうが自分の舞台を広げていける場合も多いです。私もそうでした。日本企業でグローバルに活躍するのも非常に魅力的な選択肢だと思います。
私の考え方として、20代はなるべく同じ職場で基礎力をつけ、進む道がある程度見えてきた30歳前後でステップアップするために転職したり、社内でエグゼクティブを目指したりするのがいいと思います。そして30代はプロとして実力に磨きをかける。その後40代で高度な専門職となり、さらに全体を見渡す仕事に向いていれば、リーダーシップを磨いて経営で活躍するのもいいのではないでしょうか。
羽生 御社では、どのようなキャリア展開が行われているのでしょうか。
原 「キャリアチャレンジ制度」を導入しています。具体的には、自分の適性やキャリア展望をもとに、ジョブを選択する機会を与えます。行きたい部署に手を挙げ、上司のお墨付きを得て異動します。例えば、スペシャルティ営業統括部で働いていた入社5年目の部下が、「広く発信していく業務をしたい」という希望によって、広報IR部に異動した例があります。会社側としても、ビジネスの現場をよく知る人間がIRで投資家と接点を持つことには安心感もありますし、メリットも多いと感じています。
羽生 人的資本という言葉があるように、今、人を育てる経営が注目されています。経営側(組織)の思惑と個人の成長はどのようにリンクしていると思いますか?