製造業で働く女性の少なさは世界共通の課題です。グローバル展開する企業はどのようにその課題を解決しているのでしょうか。2022年12月9日に行われた、日経SDGsフェス「ジェンダーギャップ会議」では、「ものづくりの成長における女性リーダー育成とダイバーシティ」と題したパネルディスカッションを開催。パネリストには、ARTISTIC&CO.GLOBAL(アーティスティック&シーオー グローバル)代表取締役の金 松月さん、エリクソン・ジャパン代表取締役社長のルカ・オルシニさん、日東電工専務執行役員で人財本部長の大脇泰人さんを迎え、ファシリテーターは日経xwoman副編集長 久保田智美が務めました。
(上)女性社員の昇進意欲はこう高める 3社のリーダー育成術 ←今回はココ
(下)製造業における女性活躍「できない理由を探さないで」
女性管理職比率7割超えは「自然の流れ」
日経xwoman副編集長 久保田智美(以下、久保田) 本日はものづくり・製造業に関わる方々にお集まりいただきました。まずは皆様の自己紹介と、各社の女性活躍の現状について教えてください。
ARTISTIC&CO.GLOBAL代表取締役 金 松月さん(以下、金) アーティスティック&シーオーでは美顔器の製造だけではなく、エンドユーザーへの販売まで一貫して行っています。
私は中国の吉林省の出身です。2001年に日本に留学し、07年に再来日しました。当社には経理として入社し、1年後には営業担当、その後は当社で外国人として初めて役員になり、21年2月に先代の社長の後を継ぎました。美顔器はまだまだ普及していない分、この先の市場に大きな可能性があります。
女性活躍においては社員の78%が女性で、女性管理職比率は76.9%です。「美顔器を扱う会社だから女性比率が高い」のではなく、必要な人材を集めた結果の自然の流れでした。
エリクソン・ジャパン代表取締役社長 ルカ・オルシニさん(以下、オルシニ) 私はイタリア出身です。これまでの人生の3分の2は「D&Iとは何か」を知らずに過ごしてきましたが、エリクソンに入って人生が変わりました。
エリクソンはスウェーデンに本社があるグローバル企業です。5Gのリーダー的存在で、グローバルでは134のネットワークが我々の機材を使って構築されています(22年12月時点)。ただ、まだ世界にはネットワークにつながらない人もいますので、デジタルデバイド(情報格差)を解決していきたいと思っています。女性社員比率は38%ですが、マネジメントの部署に関しては「男女比率を50:50にする」と目標を決めています。
日東電工 専務執行役員 人財本部長 大脇泰人さん(以下、大脇) 日東電工は100年以上の歴史があり、もともとは電気絶縁素材や粘着テープの製造を手掛け、今はスマートフォンの部材も提供しています。
私は38年間ほど日東電工に勤めてきましたが、非常にフレキシブルな会社です。私はエンジニアとして入社し、いくつかの事業責任者などを経て、現在は人財本部長という立場です。ESG経営(環境、社会、ガバナンスを重視した経営)を前提とし、経営戦略と人材戦略を連動させながら、DE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン=多様性、公平性、包摂性)を経営に生かしていこうとしています。
DE&Iは女性だけの問題ではありませんが、まずは女性リーダーの比率を上げるため、2030年にはグローバルで30%、日本国内では10%を目指そうとしています。