数学・理科のセンスだけではなく、人を理解するセンスも必要

―― 世界的に、STEM(科学・技術・工学・数学)分野に女性が少ないことが課題となっています。

香林 総合技術研究所では48人中7人が女性で、その中にはバリバリの理系もいます。大学で日本語研究を専攻していた人もいて、文系も少なくありません。

 IT分野の大きなテーマは、今や自動化・効率化の実現ではなく、社会課題を解決するにはどうしたらよいか、産業や生活の中に融和するかたちでITをどう取り込んでいくかです。そこには数学・理科のセンスだけではなく、人を理解するセンスも必要になります。

 当然、理系の知見が必要なところはたくさんありますが、文系のセンスが生かされる分野もたくさんある。男女がそれぞれの個性を生かすことが大事なように、理系文系もそれぞれの個性を生かし融合していくことが必要ではないでしょうか。理系で活躍するには、という表現自体がなくなっていくと思います。

 何が大切かと言うと、知的好奇心をどれだけ強く持っているかです。そして社会課題の解決であれば、その課題の背景や真因など、課題の本質を捉える力を付けることのほうがよっぽど大切だと思います。

―― 2022年4月1日に日本ユニシスの社名を「BIPROGY(ビプロジー)」に変更しました。光が屈折した時に見える7色の頭文字を並べたものだそうで、ダイバーシティを表しているような印象を受けます。ダイバーシティを推進するためのお考えや施策はありますか。

同じ文化、同じ発想、同じ思想で固まらないことが大切

香林 日本人の発想と外国文化の中で育ってきた人の発想も違います。それらを掛け合わせて生まれたセレンディピティ(偶然の産物)ってたくさんあると思うんですね。

 研究の世界では産学連携って当たり前のように言われていますが、その本質を理解してフレッシュな修士・博士の学生と研究をしてみるとか、数学の専門家と人間工学の専門家が一緒に何かをやってみるとか、そういう融合をもっとやるべきだと思います。同じ文化、同じ発想、同じ思想で固まらないことが大切だと考えています。

―― 香林さんのようなリーダーになることにちゅうちょする女性も多いです。働く女性にアドバイスをいただけますか。

香林 自分のスタイルをつくり、身構えずにやるのがいいと思います。自分のスタイルでやってみて受け入れられなかったら、その時は下ろされるだけ。それでいいじゃないかと思います。

 私の根本には、子どもに胸を張って「うちのお母さんだよ」と言ってもらえるようになりたい、そういう思いがあります。がむしゃらに会社のために働き、疲れ果てて笑顔がなくなったら、子どもは「そんなお母さんは嫌だ」と言うでしょう。笑顔を子どもに見せ、「働いているお母さんってすてきだね」と言われるようになりたいと思っています。

文/長坂邦宏 写真/木村輝