日本で続々と企画開発される多様な製品
―― ダイバーシティ&インクルージョンを推進することで、企業活動にどんな成果をもたらされますか。
ホルヘ ダイバーシティ&インクルージョンを実現し、社員が能力を十分に発揮できる職場環境を構築すれば、コカ・コーラ社の事業活動においても前向きな変化をもたらすと考えています。
日本コカ・コーラは多様な消費者ニーズに沿った幅広いポートフォリオを展開しています。日本で販売するブランド数は50以上あり、その75%は日本市場のために日本で開発されたブランドです。例えば「ジョージア」「アクエリアス」「綾鷹」「い・ろ・は・す」などがそうで、海外にも輸出されています。「ジョージア」は韓国、シンガポール、マレーシアで販売されており、今後さらに拡大する予定です。私は日本へ赴任する前はスペインにいましたが、コカ・コーラ・イベリアの売り上げの大きな割合を占めていたのは実は「アクエリアス」でした。
「ファンタ」は歴史あるブランドで、もともと若い世代のために開発された製品です。しかし昨年、日本では大人向けのプレミアム製品を作ることで、30代以上の新しい消費者を獲得することができました。消費者の多様な生活形態やニーズに合わせて製品を生み出した一例です。
東京のお台場にコカ・コーラ東京研究開発センターがあり、素晴らしい人材のそろったチームが製品開発に取り組み、世界に向けてインスピレーションやアイデアを発信する源となっています。
―― 女性の声から生まれた商品はありますか。
ホルヘ ここに通常のボトルより小さめのサイズのものがあるのがお分かりだと思います。容量が280mlのボトルですが、これらは女性がバッグに入れやすい大きさのものが欲しいという要望から開発されました。
ゼロカロリーあるいは低カロリーの飲料も、女性の声を反映して開発されたものです。昨年は、日本で初めて肌の潤いを守るヒアルロン酸を機能性関与成分として配合した機能性表示食品「からだ巡茶 モイスティア」を発売しました。また、商品ではありませんが、上司と言ったら男性を思い浮かべがちのところを、あえて女性上司が登場するテレビコマーシャルを企画し、思いのほか反響を集めたこともあります。
マーケティング部門では日本コカ・コーラの女性管理職比率は55%で、その成果が商品企画に表れているのだと思います。炭酸飲料に関するマーケティング部門のリーダーは韓国人女性、それ以外のコーヒーやお茶などの飲料に関するマーケティング部門のリーダーは日本人女性です。最近は男性のリーダーたちも女性の声に耳を傾けるようになり、女性のアイデアをどんどん取り込もうという姿勢が出てきています。
日本の平均的な企業から見れば、日本コカ・コーラは女性社員比率も女性管理職比率も高いかもしれませんが、海外に比べればまだまだ少ない。女性たちが日本コカ・コーラで働き、そのキャリアを磨き、そして個人的にも居心地のいい場所だと思ってもらえるような職場環境をつくっていきたいと考えています。
会社を持続的に成長させるためには、環境や多様な消費者ニーズをうまく捉え、それらに真摯に向き合っていかなければなりません。グローバル企業として、飲料のリーディングカンパニーとして、ダイバーシティ&インクルージョンの推進は必要不可欠な経営戦略なのです。すべての社員が能力を最大限に発揮できる機会を提供することこそが会社の持続的な成長に不可欠なものと考えています。
日本コカ・コーラ代表取締役社長

文/長坂邦宏 写真/木村輝