現場監督を支える「建設アシスト」、技能を伝承するアプリ「技ログ」

―― 問題の所在はわかったので、変えるために行動しないといけないということですね。次は質問2「世の中で放置されていた問題、ここに着手した!」です。建設の世界でのフロントランナーとして、竹延さん、これまでに着手したことを教えていただけますか。

竹延 スライド(下)にある上の写真をご覧ください。右が78歳になる職人さんで、1970年大阪万博の日本国館やアメリカ館の建設に携わった方です。そして、左がここ7年間で育った女性の職人さんで、万博記念公園に残された「太陽の塔」の塗り替え工事を担当しました。2025年に万博が大阪に再びやってくるに当たり、こうして2世代、3世代開いた職人さんたちが今ようやく融合するようになりました。しかもジェンダーギャップを打ち破ることによって、それを実現しています。

 当初、会社の資産は職人の技しかなかったのですが、試行錯誤しながら、そこに人材育成のノウハウを結びつけました。最終的には技能をしっかり勉強していただき、しっかり給料を払えるように高付加価値の仕事に切り替えてきました。

 もう一つの大きな問題は、働き方改革が建設業界では5年間延長されていることです(時間外労働の上限規制の猶予期間が2024年4月まで)。すなわち、この業界が遅れているのを認めているということです。そこで私たちは現場監督の書類業務をなんとかなくせないか、ということで新しい事業を立ち上げました。

―― 書類業務にはどんな問題があるのでしょうか。

竹延 現場監督の仕事には、現場の監督業務と書類業務がありますが、全体の6割近くを書類業務に使っています。書類業務がすべて悪いわけではありませんが、ノンコアな書類業務があふれかえっている。そのノンコアな書類業務を、子どもを同伴できるサテライトオフィスで、デジタルスキルがあって意欲のある女性にやってもらう。こうすることで、現場監督を支えて生産性をアップする「建設アシスト」という新しい取り組みを始めました。

―― デジタル技術も活用していますか。

竹延 私たちの会社では職人さんの技能伝承をしていかないといけません。伝えていきたい「技」を動画に収録し、時間のあるときに見てもらう技能伝承アプリ「技ログ」をつくりました。職人さんに電車の中で見てもらうこともできますし、建設アシストの女性たちにも、家事や育児が終わった後に見てもらい、現場を知ってもらうことができます。

 当初は塗装の動画から始めたのですが、今では建設業のほかに農業、漁業、製造業の3000以上の動画がアップされています。ここで大事なのは、動画に社名が書かれているということですね。あの会社はちゃんと教えてくれる会社だということがわかり、そこで働いてみたいと思い、マッチングの機能も果たします。言語は自動翻訳で7カ国語に対応していますので、海外の方にも見ていただけます。

竹延幸雄(たけのべ・ゆきお)さん<br>KMユナイテッド・竹延 社長。1973年広島県生まれ。鉄鋼メーカー、広告会社に勤務後、結婚。妻の実家である建築塗装会社の竹延(大阪市)に入社。その後、KMユナイテッド(京都市)を設立し、建築塗装に関する技能者の育成、技術者の業務改善を行う。現在、塗装ロボットを開発するため、母校・早稲田大学理工学部の大学院で勉強中。2016年に経済産業大臣表彰「新・ダイバーシティ経営企業100選」、17年厚生労働大臣表彰「働きやすく生産性の高い企業・職場表彰」最優秀賞など数々の賞を受賞している
竹延幸雄(たけのべ・ゆきお)さん
KMユナイテッド・竹延 社長。1973年広島県生まれ。鉄鋼メーカー、広告会社に勤務後、結婚。妻の実家である建築塗装会社の竹延(大阪市)に入社。その後、KMユナイテッド(京都市)を設立し、建築塗装に関する技能者の育成、技術者の業務改善を行う。現在、塗装ロボットを開発するため、母校・早稲田大学理工学部の大学院で勉強中。2016年に経済産業大臣表彰「新・ダイバーシティ経営企業100選」、17年厚生労働大臣表彰「働きやすく生産性の高い企業・職場表彰」最優秀賞など数々の賞を受賞している