社内サーベイで「ケアが行き届いていない人」を把握

梅木 トップマネジメントを巻き込むことは重要ですよね。もちろんトップだけではダメで、部署のリーダーである部長クラスも巻き込みながら全体感を持って進めていく。影響力のあるインフルエンサーの協力もポイントです。

羽生 さまざまな取り組みによって、社内にどのような変化がありましたか?

中田 課題のひとつに「若手の女性の退職率が男性より高い」という項目があったのですが、今ではかなり解消されています。ほかにも、社内でエンゲージメントサーベイを行ったところ、複数の項目で女性のスコアが改善したことが分かりました。

羽生 やはりこうしたサーベイで従業員の状況を把握しておくことは大事でしょうか。 梅木さん、いかがですか?

「社内でD&Iを推進していくには、体制づくりが大事」(羽生)
「社内でD&Iを推進していくには、体制づくりが大事」(羽生)

梅木 会社の施策の方向性が従業員の期待に合っているかを確かめる上で、定期的にサーベイを行って数値化することは大事ですね。その際に、属性ごとに分けて比較し、どの属性の人たちに会社としてケアが行き届いていないかを分析・把握する。PwCでも、年1回、グローバルで一斉に調査を行い、スコアが低いとトップが改善を求められます。グローバルで同じ質問をするので、日本だけ低いと目立ってしまいます。毎年継続的に測定し、スコアの低い課題に注力しています。

 日本はグローバルに比べてダイバーシティの取り組みが遅れていましたが、やらなくてはならないというグローバルからのプレッシャーがあったことは、初期の段階では、取り組みを促す一助となりました。

 私たちが悩んでいる課題のほとんどは、すでに米国や英国などでは経験済み。課題解消のために何をやればいいかというお手本があります。例えば、アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)研修や女性のリーダー育成プログラム、スポンサーシップ制度など、グローバルから取り入れたフレームワークに従って進めることができました。

羽生 そうした、外資系企業ならではの「プレッシャー」が利用できない日本企業の場合はどうしたらいいでしょう。中田さんも以前、外資系の製薬会社勤務を経験していますが、いかがでしたか?

中田 私が三菱ケミカルに入社した2018年には、すでにダイバーシティは女性のためだけでなく、経営にとって必須だと経営陣が十分に分かっていたので、問題はありませんでした。その下の層にどうやって理解してもらうかを考え、「経営戦略」や「成長」をキーワードにして進めていきました。

羽生 ダイバーシティは女性のためだけでなく、企業の成長に必須なのだと定義し、経営戦略として社内に浸透させることが大切ですね。


 後編「多様性推進の『壁』どう乗り越えた? 責任者2人の本音」に続きます。

文/西尾英子