日本のジェンダーギャップは政治・経済分野での後れが知られているが、教育機関、特に大学においてもまだまだ課題が山積している。そのような環境のなか、大阪大学の西尾章治郎総長はジェンダー多様性に関連するあらゆる項目に着手。目標を掲げ、それを掛け声に終わらせず一つひとつ実行していく。テーマはボードメンバーの女性比率向上、性的マイノリティーや理系女子の支援、アンコンシャス・バイアスの克服など幅広く、まさに「阪大の多様性改革」といってもよい。具体的な取り組みを西尾総長に聞いた。

すべての人の個性が尊重され、自由で対等に活躍できる風土づくりを

編集部(以下、略) 西尾総長は30%Club Japanに加入し、内閣府「輝く女性の活躍を加速する男性リーダーの会」に賛同、全国ダイバーシティネットワークの総括責任者も務めるなど、多様性の推進に積極的です。

大阪大学 西尾章治郎総長(以下、西尾) ダイバーシティ環境とは、性別、性的指向・性自認、障がいの有無、国籍、文化的背景、ライフスタイルなどにかかわらず、個性が尊重され、自由で対等に活躍できる風土づくりのことだと考えています。大学はそもそも、多様な人を認め合う環境でなくてはなりません。学問の分野によっては、短期間で結果が出るものもあれば、10年以上研究しないと成果が出ないものもあります。いろいろなタイプの人たちを温かく包み込み、安心して力を発揮してもらう環境が必要なのです。

 大阪大学は、世界屈指のイノベーティブな大学になることを目指しています。そのためには、多様な個性と知が交差するダイバーシティ環境の構築が必須です。ダイバーシティ環境のない大学は、国際的な競争力を失い、存在価値を失っていくでしょう

―― 大阪大学では理事における女性比率を20%以上にする(2021年4月時点)など、女性の登用を進めています。その理由は?

西尾 経営に関わる人の多様性を高めることで、判断ミスのリスクを減らせると考えているからです。リーダーの役割は、先々を見据えて組織を導くことです。カリスマ的なリーダーが自分で判断し、トップダウンで指示を出すやり方もありますが、情報伝達のスピードが速くなり、産業構造がドラスチックに変わっていく現代において、1人のカリスマの判断にすべてを委ねるのはリスクが大きくなっています

大阪大学総長 西尾章治郎さん。取材はオンラインで行われた
大阪大学総長 西尾章治郎さん。取材はオンラインで行われた

 西尾大阪大学には約3万人の構成員(教職員、学生など)がいますが、もしも私が1人の判断で物事を進め、その判断が誤っていたら、3万人を間違った方向に導いてしまうことになります。私は日ごろから、女性も含めた理事や教員などさまざまな立場の人の意見を聞き、尊重することを心がけています。

 最近のリーダーシップ論で「サーバント・リーダーシップ」(Servant Leadership)という考え方が広まっています。リーダーの役割は、多様なメンバーが活躍しやすい環境を整えるサーバント(奉仕者)となること。メンバーをバックアップし、フォローし、間違いがあったら修正する。私は総長としての役割をそのように捉えています。