40代で3人の子の母でもある、アイスランドのカトリン・ヤコブスドッティル首相。ジェンダー平等を最重要政策の一つに位置づけ、世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数では12年連続で1位を獲得。賃金格差の是正や、男性育休の推進、保育園・就学前教育の充実などに取り組んできました。「社会の常識が変わっていくのを目の当たりにした」と彼女は言います。2022年5月13日に日本経済新聞社と日経BPが開催したイベント「ジェンダーギャップ会議」に首相から寄せられた、特別動画メッセージを紹介します。
女性たちの粘り強さと団結力が成功の鍵だった
ご参加の皆さん、まずは日本経済新聞社と日経BPに対して、ジェンダー平等に関するイベントの開催を感謝いたします。本日は映像での参加になりますが、近い将来、素晴らしい国・日本を訪れたいと思います。アイスランドにおけるジェンダー平等の進展を皆様にお伝えできることをうれしく思います。
わが国には、ジェンダー平等への道のりを女性が戦ってきた長い歴史があります。女性たちの粘り強さと、歩みを進めるための団結力が、私たちの成功の鍵でした。アイスランド政府はジェンダー平等を最優先事項としています。
2018年には「同一賃金証明法」が施行され、従業員25人以上の企業や機関は、同一労働同一賃金の提供について監査を受けることが義務付けられています。男女の賃金格差は、まだ解消されてはいないものの、過去数年で減少しています。
調整前(男女で単純比較した場合)の賃金格差は2008年の20.5%から2020年には12.6%に減少し、調整後(条件をそろえた場合)の賃金格差は同期間で6.4%から4.1%に減少しています。調整前賃金格差が残っているのは、何よりも、労働市場において男女が分離されているからです。
特定の労働分野では、いまだに女性が大半を占めており、このような分野は長い間、過小評価されてきました。その多くはケア職で、歴史的に、女性が家庭の中で無給で行ってきた仕事です。
これらの仕事で求められる能力や技能は社会で非常に過小評価されており、これは変えていかなければなりません。
新型コロナウイルスの感染拡大によって、これら女性が活躍する分野の価値と重要性が浮き彫りになりました。
これらの仕事なしには社会が成り立たないこと、そして経済の他の部分がいかにこれらの仕事に依存しているかを目の当たりにしてきました。
このことを念頭に置き、これらの重要な仕事に従事する人々には、公正な報酬が支払われなければなりません。
重要なことは、労働市場における平等と同一賃金は、給与の話にとどまらないということです。同一賃金と経済的自立は、男女平等のあらゆる基礎です。