経営者が先頭に立って示していく
小出 今年は新型コロナウイルスの影響で、残念ながら中止になりましたが、東京・代々木で行われる性的マイノリティーへの理解を深める「東京レインボープライド」というイベントのパレードに、当社は昨年、200人超のチームとして参加しました。私も列の先頭に立って歩きました。これは一例に過ぎませんが、経営者は社員に行動で示し、会社としてこのテーマに本気で取り組んでいくことを示さなければいけません。
小出 社員の給与格差を是正する取り組みもそうです。同じポジションで同じ仕事をしている人の給与水準を合わせるために、当社では年に何度か調査を行っています。そうしなければ、知らないうちに性別や国籍で差が出てしまうからです。これに関しても言いっぱなしではいけないわけで、リーダーが常に先頭を切ってイクオリティの浸透度合いをチェックし、何か間違いが起きていたらチェックして改善し続けることが大事なのです。イクオリティはいわばリーダーシップを表現する舞台だと思っています。
当社はイクオリティの実現に本気で取り組んでいて、もう一人のCEOと呼ばれる「チーフ・イクオリティ・オフィサー(最高平等責任者)」という役割を持つ役員をグローバルで一人任命しています。彼が率いる部署が、組織内で不公平が起きていないかをチェックし、イクオリティを加速させるためには何をしたらいいかを常に考えている。このように継続してイクオリティを実現するための仕組みをつくることが大事です。年一度の年次経営会議や社長方針発表で「イクオリティ」という言葉を掲げるだけでは意味がありません。
私にとって、ダイバーシティはあって当たり前
―― 小出さんは、なぜ骨の髄までイクオリティやダイバーシティの実現の大切さが染み込んでいるのでしょうか。
小出 私は外資系に勤務して40年たちました。これまでの経験から、私にとってダイバーシティはあって当たり前のものです。ボスが女性だったことも何度もあります。私は当社のアメリカ本社の役員にも入っており、周りにLGBTQの当事者もいて、性的マイノリティーがいても当たり前の文化が私自身にも浸透しています。
東京レインボープライドのパレードに参加することに対しても抵抗感はありませんでした。実際に参加してみて、パレード参加者だけでなく、路上でパレードを見ている人を見ることができ、性的マイノリティーというテーマにこれだけの人が興味を持ちだしたということが分かりました。身をもって時代の変化を感じました。