組織図の3年後の絵を描いて、そこから男性の名前を全部消してみる

―― 小出社長は役員の何割かに女性を登用するというクオータ制はどう思われますか?

小出 それは企業によって温度差があるでしょう。いきなりクオータ制を実施して、その結果、ネガティブな結果を導いてしまう企業もあれば、ある程度下地がある環境であればクオータ制が効果を発揮するでしょう。その時点での企業のポジショニングによると思います。今、その企業が何を基準に判断するかという軸がないと判断は難しいでしょう。

 私は部下と話をするときに、「ところで、自分の後継者に一人でも女性を入れるというプランを中長期で持っていないとダメだよ」と日々伝えています。この「日々、伝える」ということが大事です。キャリア構築や人材育成というのは、今日明日の話ではありません。具体的に何をなすべきかを、継続的に常にコミュニケーションすることからのスタートだと思っています。

 男性の中に女性を一人だけ入れようという発想だと、小さいことしかできません。ですから、私は部下に「自分の組織図の3年後の絵を描いて、そこから男性の名前を全部消してご覧よ」「自分の組織を全部女性で構成した場合の絵を描いてみてよ」と言います。そうすることで、リーダーは自分がどの女性のキャリアをどれだけ構築しなければいけないかが分かります。その図を実現するとしたら、そこから3年間で何をすべきなのかという発想がなければダメでしょう。その過程においては、もしかすると「女尊男卑」になる瞬間があるかもしれない。それでも1回オーバースイングしない限り、ジェンダー平等は実現が遠くなってしまうかもしれません。

―― 2000人の女性の中で、1人だけ男性としてパネルに参加するといった経験のある社長は珍しいと思います。いわゆる日本企業ではやはり既得権益があり、自分の椅子を女性に差し出すことにもなりかねないわけです。そういった考え方がある方々への特効薬は何でしょう。

小出 (男性社長に)マイノリティーの経験をしてもらうことでしょう。女性社員を10人ぐらい集めたラウンドテーブルであれば、ほかの社長の皆さんもやっていると思うんです。でも、それぐらいの少人数では、そこに集められた女性たちは忖度(そんたく)した意見しか言わないと思います。

 そこはもう思い切って女性社員を500人ぐらい集めて、ライブでどんな質問でも匿名で上げていいよ、と言うのです。そして参加者からの質問を映し出す画面も公開しながら、「なんで社長はもっと積極的にやっていかないんだ」といった質問に自ら答えていく。この方法は過激に聞こえるかもしれませんが、たぶんそういうことをやっていかないと今後10年間も何も変わらないですよ。20年たっても何も変わっていないかもしれない。今のままだったら、日本のジェンダーギャップ121位が、140位とかになってしまうと私は思うんです。

 2018年のことです。当社のCEOであるマーク・ベニオフと、とある影響力のある日本の経済団体で行われたイベントのパネルに出るため、車で移動していたとき、マークに「小出さん、今日のプログラムを見せてよ」と言われたので見せました。そこにはさまざまなセッションやセミナーなどが多数書かれていたのですが、女性のスピーカーはほんの数人しかいなかったのです。それを見てマークが「ああ、日本のジェンダーギャップ指数が低いってことがここからも分かるよね」と言っていました。

 そしてマークはパネル本番中も「壇上のパネラーが全員男性であるということは問題ですよね」と発言していました。そういう意識を常に持っている人からすればこの状態は異常です。でも、そういう意識を持っていない人にはなかなかその異常さが感じられないのです。