2014年7月に300人の陣容でスタートしたKPMGコンサルティングは現在、約1300人の専門家集団となった。事業会社の出身者も多く、その知識と経験は多種多様。力を入れて取り組むIDE(インクルージョン、ダイバーシティ&エクイティ)の中でも、女性活躍推進を重要課題として位置付けている。IDEとはどんな考え方なのか。女性活躍における目標と具体的な施策は何か。代表取締役社長兼CEOの宮原正弘さんに聞いた。(聞き手は平田昌信・日経xwomanプロデューサー)

いろいろなアイデアや価値観が反映されることで、より良いサービスになる
―― これまでの主な経歴を教えてください。
宮原正弘さん(以下、宮原) 公認会計士として、あずさ監査法人の前身で4年間働いた後、自ら手を挙げて、(合併した)アーサー・アンダーセンのビジネスコンサルティング部門に異動しました。それ以降、人生の半分以上にわたりコンサルティングに携わっています。1998年から1年半ロサンゼルスに、2007年から2年間ニューヨークに駐在しましたので、そのときにジェンダー平等やLGBTQ(性的少数者)といったダイバーシティの重要性を体感しました。KPMGコンサルティングの社長には2017年7月に就任しました。
KPMGコンサルティングの設立は2014年7月で、当時はマネジメントコンサルティング部門が約100人、リスクコンサルティング部門が約100人に加え、新たに100人のテクノロジーの専門家を招へいして合計300人だったのですが、現在では約1300人に拡大し、総合コンサルティングファームとして変化を遂げています。
他の大手コンサルティングファームに比べると規模は小さいですが、社長就任以来、売り上げや人員の規模をいたずらに追求しない方針でやってきました。お客様にしっかり向き合い、寄り添うことで、お客様の健全な成長に寄与し、自らも成長することを心掛けています。
KPMGコンサルティングは「人を大事にしていく組織です」と私は言っています。そして「KC(KPMGコンサルティング)ファンをつくっていこう」とも。常にお客様が当社に相談したくなるような、長期的でサステナブルな関係をつくっていきたいと思っています。
―― IDEについてのお考えを教えてください。
宮原 今までインクルージョン&ダイバーシティと呼んでいましたが、昨年からグローバルでインクルージョン、ダイバーシティ&エクイティ(Inclusion, Diversity & Equity)という名称に統一しました。インクルージョン(包摂性)が先にあるのは、何よりも「多様なひとや価値観をインクルードする(取り入れる)ことが重要」と考えているからです。
ダイバーシティ(多様性)には、性別だけではなく、国籍、LGBTQ、世代のほかに、いろいろな経験、専門性や職歴も含まれます。しかし、ダイバーシティがあるだけでは意味をなしません。それらをインクルージョンすることにより、多様な人たちが安心して働くことができ、心理的安全性が担保される環境で、ちゃんと自分の意見や違和感を建設的に発信することができ、それを受け止めることができる組織・文化を醸成することが大切です。
そこにエクイティ(公平性)が付け加わり、KPMGが保有するアセットや機会に誰でも公平にアクセスしながら、共に成長していくことが大変重要だと考えています。中途・新卒採用を通じて短期間に成長してきた当社では、さらにその多様な人材の活躍を推進するために、2019年3月にI&D推進室(現IDE推進室)を立ち上げました。
―― なぜ多様性が重要なのでしょうか。
宮原 多様性により組織やコンサルティングのイノベーションを実現できます。イノベーションにつながる前段階としても、いろんなアイデア、いろんな価値観が反映されることによって、サービスがより良いものになっていきますし、生産性やアウトプット品質の向上にも役立ちます。
この変化の激しい時代では、20年を超える経験があるベテランコンサルタントが手掛けたものが必ずしもいいわけではない。新しいアイデアが求められますし、若い人の意見も必要になります。さまざまな立場や現場で培った経験による考え方を組み合わせることによって、価値がより高まっていきます。
そのためには、忌憚(きたん)なく意見を述べ、互いにリスペクトしながら建設的に議論できることが大切で、そういう文化をつくっていくことが重要だと考えています。
