透明性をもってビジネス戦略を開示し、リアルタイムで社員と共有

―― 日本の会社だとそこまでシビアではない?

石山 いいとか悪いとかではなく、違いますね。日本企業では浮き沈みはあるけれども定年までまっとうでき、その安心感の中で生まれるすばらしいバリューがあると思います。ただ一方で、その傾向が今後も続くのか、というところに今来ているんだと思います。

 それに対し、私たちは余力の部分がないから必死ですし、厳しさもあります。「業績本位な会社だ」とつくづく感じます。しかし業績本位な分、働き方に関しては割とフレキシブルです。達成すべき目標が個人個人で明確になっていますので、それを達成できれば働き方に関してはマネジャーと本人のコミュニケーションで決められます。

―― SAPの仲間についてはどんな印象をお持ちですか。

石山 「プロフェッショナルな人が多い」と思います。それはHRの同僚についても言えますし、ビジネスサイドの人たちについてもそうですね。しかも、私みたいな新参者が入ったときにみんなが助けてくれる。「1on1(課題解決のための1対1の面談)をやろうか」とか、「メンターやろうか」と声をかけてくれる。そういうところを含め、行動やマインドセットもプロだと感じます。

 メンター制度についてはグローバルでプログラムがあり、「メンターが欲しい」と言えば「私やりますよ」と名乗りを上げてくれる。私にもメンターが何人かいます。入社したときはシンガポールの同僚がメンターになってくれました。今はビジネスサイドのオーストラリア人がなってくれています。海外の人とはバーチャルなツールによるコミュニケーションもありますし、メールで行うこともあります。SAPの場合、メンター制度という堅苦しいものではなく、企業文化のひとつという感じになっていますね。

―― SAPの人事戦略を教えてください。

石山 SAPの場合、人事戦略だけが先行してはいけないという考え方があります。ビジネス戦略があり、それを実行するために人事戦略があります。

 「才能ある人材を採用・育成する」、「将来の課題への対応力を取り入れる」、「新しい時代のパフォーマンスを最大化するためのマネジメントを行う」という縦軸に対し、「新しいリーダーシップカルチャーを醸成していく」、「将来の課題への対応力を身につけていく」、「ダイバーシティ&インクルージョン(多様性とその受容)を推し進める」という横軸を掛け合わせたマトリックスの中で、アクションプランを立てていくようになっています。

 どうしてこうなっているんだろう?と思ったのですが、IT(情報技術)のビジネスって本当に変化が激しく、ビジネス戦略を思い切って変えていかなければ時代に追いつかないし、コロナ禍も突然発生します。そのつど組織を変えて人を入れ替えていたら犠牲が大きい。

 それよりも、変化に対応できる人材を育て、ビジネス戦略が変わったら会社が透明性をもって開示し、リアルタイムで社員と共有していけば、会社も社員も適応し成長していける。そこを目指そうとしているのではないかと思います。

「ビジネス戦略があり、それを実行するために人事戦略があります」(石山さん)
「ビジネス戦略があり、それを実行するために人事戦略があります」(石山さん)