「3G」とインクルーシブなカルチャーが大切

―― SAPの人材育成で特徴的なことはありますか。

石山 SAPには全世界で共有する人材育成プラットフォーム「SAP SuccessFactors」というクラウドソリューションがあります「このジョブのこのグレードの人なら、今こういう研修を受けるべきですよ」と、クラウドのシステムによって研修メニューが推薦される仕組みになっています。

 ただし研修がすべてではありません。SAPでは研修で10%、同僚たちからのインプットで20%、そして日々の経験から70%を学ぶ、としています。「自分のキャリアは自分で育てていきましょう」「キャリアの運転席には自分自身が座るんですよ」と常に言っています。

 SAPにいて感じることは、「タレントは管理できない」ということです。そもそも人間ってスキルとか経験を持っていても、そのときの健康状態とかでなかなか力を発揮できなかったりします。

 でも、ジョブは管理できますよね。ジョブで管理し、そこにふさわしい人が常にいる。これをうまく回していけば、みんながパフォーマンスを発揮し、会社も成長する幸せな状態がつくれるんじゃないか。SAPは本気でそう思っています。

―― 女性活躍やダイバーシティ&インクルージョンの考え方、取り組みについて教えてください。

石山 ビジネス戦略から見て多様性はとても重要です。その多様性というのは何で構成されているかというと、ジェンダー(性差)はもちろんのこと、ジェネレーション(世代)、グローバルカルチャー(国籍、文化)の「3G」です。そのうえで、「Beyond3G(3Gを超える活動)」として、すべての人がインクルーシブに協働できる環境を作ることが必要です。さらに、ゼロハラスメント、新しいリーダーシップにより共感力や心理的安全性が尊重されるカルチャーをつくっていくのがSAPジャパンの目標です。2019年にCOOによりマニフェスト化されました。

 SAPのグローバルはさらに先を行っていて、ダイバーシティではたとえば自閉症の方を積極的に雇い入れましょう、移民の方に機会を提供し活躍してもらいましょうといった目標があります。ジェネレーションやジェンダーというのは卒業している話ですが、我々ジャパンはまずジェネレーション、ジェンダー、グローバルカルチャー、そしてそれを包括的な観点から取り込むBeyond3Gから始めましょうと考えています。

―― ダイバーシティ&インクルージョンには、どのような体制で取り組んでいますか?

石山 多くの会社では、ダイバーシティ&インクルージョンを推進するための組織をつくっていますが、SAPジャパンでは、そうした組織はありません。専任の組織ではなく、D&I(Diversity & Inclusion)に関心を持つ社内の有志メンバーの集まりであるD&Iチームが推進しています。専任ではなく、全員に本業があり、手を上げて参加しています。今のチームができたのは2020年で、チームのリーダーも本業は通信業界担当の営業職です。

 2015年ころはダイバーシティ&インクルージョンを人事部門で推進していたのですが、なかなか活動が盛り上がりませんでした。ところが、メンバーを手挙げ制で集めるようにしたところ、それぞれパッションを持って意識を高めていく活動が堅苦しくなくできたりと、一気に盛り上がってきました。現在のメンバーは約30人で、「メンバーに加わりたい」という声も多いです。この半年間でも新しいメンバーが5人ほど入り、新入社員も2人います。

―― 専任組織ではなく手挙げ制で、情熱を持った人が有志メンバーとして集まるというのは、興味深い取り組みですね。ダイバーシティ&インクルージョンのための制度、研修は何かありますか。

石山 女性リーダー育成プログラムはありますし、ジェンダー平等実現のための男性リーダー育成プログラムもあります。さまざまなリーダーのためのメンタリング制度、育成プログラムがありますが、それらをきちんと活用し、実りあるものにしてもらうために、引き続き活動を強化していこうと考えています。

 福利厚生でいうと、同性パートナーの結婚休暇、お祝い金の支給、介護傷病の休暇制度があります。もちろん男性育休もあります。

「D&Iチームを、手挙げ制で集めるようにしたところ、一気に盛り上がってきました」(石山さん)
「D&Iチームを、手挙げ制で集めるようにしたところ、一気に盛り上がってきました」(石山さん)