少数精鋭で生産性向上。そのためにはダイバーシティが必要

―― これまで仕事で苦労したこと、つらかったことは?

的場 営業を始めた頃に「うちの担当、女性なの?」と言われたことがあります。でも、当時の課長が「うちで一番いい売り子なんです」と言ってくれ、相手に受け入れていただきました。

 仕入れ先は男性が多いのですが、こんなことがありました。自分がダメだと言われたのに対して、相手を理詰めで追い詰めてしまったんです。「あんなヤツと仕事はやっていられない」と言って、相手の方は仕事を辞めてしまいました。あのときのショックは忘れられません。

 何か交渉するときに追い詰めてはいけない。相手に少し逃げ場を与えないとダメなんだ。自分が正しいからといってグイグイ行くのはよくない――。そのとき、こうしたことを教訓として学びました。

―― 伊藤忠商事のダイバーシティ&インクルージョンに関する考え方を教えてください。

的場 少数精鋭で生産性を向上させるというのが伊藤忠商事の“金看板”です。それを実現するために何が必要かと考えると、ダイバーシティがひとつの大きな柱になります。では、ダイバーシティを確保するために何をするか。やはり働き方改革です。働き方にいろんなバージョンがないと多様な人に対応できない。これも大きな柱と考えています。

 もちろん、ダイバーシティは、イノベーションにもつながります。お客様目線という観点からも、とても重要だと思っています。

 中期経営計画「Brand-new Deal 2023」(2021~2023年度)には2つの柱があります。「マーケットイン」による事業変革と「SDGs」への貢献・取り組み強化です。この2つの柱は人事政策にも反映させていきます。

 まずマーケットインという観点から言いますと、人事・総務部にとってのマーケットは従業員です。女性が子育てをしながら仕事をするために、女性活躍支援というセーフティーネットを準備しつつ、個別の事情をヒアリングしながら一人ひとりに合った支援策を考えていきたいと思っています。

 SDGsという観点では、ジェンダー平等は絶対に必要なことです。まだまだ少ない女性社員をどう育てていくか。それから事務職で入ってきた女性も総合職に転換できる選択肢があります。そういうキャリアアップのやり方もどんどん広めていきたいと思っています。

 出産、結婚などのライフイベントがある年齢までに、海外駐在を経験させることもやっていきたい。また、最近グループ会社の経営が大きなアジェンダになっていますので、出向させて少し小さな組織で経営人材に育てていくことも、考えています。

―― コロナ禍の収束がまだ見通せません。今後、働き方はどのように変わると思いますか。

的場 やはり多様な働き方が必要だと思います。子育てしている方や介護をしている方は、リモート環境があれば、もっと戦力として活躍できます。いろんなバックグラウンド(経験・経歴)の労働力が会社の活性化のために重要だと感じています。そのための制度を整備していく必要があります。

「少数精鋭で生産性を向上させるのが伊藤忠商事の“金看板”。それを実現するためにはダイバーシティがひとつの大きな柱になります」(的場さん)
「少数精鋭で生産性を向上させるのが伊藤忠商事の“金看板”。それを実現するためにはダイバーシティがひとつの大きな柱になります」(的場さん)